学会賞授賞作

第3回(2012年)

論文の部 李炅泰(2011)「アニモシティ、マテリアリズム、ギルト
―韓国消費者の日本製品評価について―」『多国籍企業研究』第4号

本研究は国際マーケティングのカントリー・オリジン問題をさらに深化させ、消費者が潜在的に持つアニモシティ(憎悪)感情、マテリアリズム(物資的豊かさの追求)、ギルト(合理的選択と感情的拒否の不一致から来る罪悪感)の関係を韓国消費者の日本製品評価について検証したものである。この論文は次の3点で優れている。

第1点は、詳細な先行研究に基づき概念の確認と調査設計を行っており、過去の論文のレファランスも十分であること。第2は、調査票作成の操作化、二重翻訳、調査票の回収方法などに十分な注意が払われ研究方法としては万全を期したものであること。したがって、再現性が高い科学的研究であること。第3は、アニモシティ、マテリアリズム、ギルト・フィーリング、プロダクト・ジャッジメントという4つの構成概念の相互関係を立体的に分析したことが大きな特長である。これにより、消費者の複雑な意思決定構造が視覚的に表現されている。以上の理由により、本論文を学会賞(論文の部)に相応しいものと判定する。

ただし、今後の課題も指摘しておきたい。第1に、本研究の実務的なインプリケーションは何なのか。この研究結果をどのように活用して国際マーケティングを推進するのか、そこまでの言及がほしかった。第2は、サンプル数の少なさと偏りである。本研究は必ずしも平均的な韓国人消費者を代表していない。その結果、仮説の検証結果に不安が残る。第3は、本研究は従来のマーケティング論の主流から見れば、いわば傍流である。研究分野の細分化により、こうした研究が脚光を浴びるのは分かるが、それがグローバル・マーケティング研究とどう結びつくのか、今後の研究の展開に期待したい。

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