多国籍企業研究第16号
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2 国立情報学研究所(NII、National institute of informatics)が運営する学術論文や図書・雑誌などの学術情報(2)研究の構成データベース、Citation Information by NIIの略。液晶技術を用いた中間財企業の製品プラットフォームの構築プロセス 千島 智伸3(船田,2007)。近年の液晶産業をテーマとする分析は、液晶TV等のセットメーカーを対象とした事例分析が多く、中間財としてのディスプレイパネルメーカーが創出した価値に焦点をあてた研究は少ないと言える。たとえば、CiNii Research2(NII学術情報ナビゲータ)による「液晶パネル」のキーワードで行った研究論文の検索が766件(2022年12月23日基準)で、ほとんどが液晶の新たな技術や開発工程に関する記述が多いことからも、価値の創出と設計思想の2つの視点を融合させた分析の必要性を指摘する。Adner and Kapoor(2010)は、「イノベーションの成功は、そのビジネス環境内の他のプレイヤーの努力に左右される」と述べ、価値を創造する企業間連携は重要なテーマと指摘している。この意味は、企業、供給業者、補完業者、顧客などの複数産業における多様な主体から構成されるネットワークに注目し、多様な企業がお互いの役割を補完しながらビジネスの収益構造を最適化することである。これまでこうした現象を取り扱う研究を進めるためには、自社単独のイノベーションそれ自体で顧客となるセットメーカーの製品価値を高めるのは限界が見えること、企業間連携によって製品開発コスト等を効果的に抑制し、新たな顧客との接点を持つ必要がある。しかしながら、エレクトロニクス製品に関係する複数の企業間取引を具体的に示したものはなく、そこで製造業の企業間取引にとって新たな視点を伴う製品プラットフォームの在り方を問うことにした。本研究では、製品プラットフォームの定義を、「製品ラインや一連の製品グループなど複数製品を開発する際のベースとなる基盤技術」(延岡・伊藤・森田,2006)」が示す概念を用いている。エレクトロニクス製品は、中間財としての液晶ディスプレイが完成品の競争力に与える影響が大きく、SECやAppleの液晶製品を支えている。このような液晶ディスプレイは、どのようなプロセスで開発しセットメーカーから持続的に採用されているのか。これを明らかにするため、研究題目で示すように「液晶技術を用いて競争優位が持続する中間財企業は、どのようなプロセスで製品プラットフォームを構築したのか」、これを大きなリサーチクエスチョン(以下,RQと略称)と位置づけている。まず、1ではRQを設定し、その問題意識の背景と理由を説明する。そして、2で液晶をテーマとする先行研究をレビューし、RQへの解答に繋げるために、分析を通じ明らかにしたい設問としてサブクエスチョン(以下,SQと略称)を設定する。3は、定性的なデータから理論構築を行う研究手法について説明する。4は、対象企業が推進した戦略を確認するため、インタビューで収集Yin(1994)は「事例分析は、現在の状況に焦点をあてたダイナミクスや動力源を理解するために問いを立て、検証の妥当性を高める適合的な方法論」と主張し、本研究ではこれを原則とした事例分析を進める。

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