多国籍企業研究第16号
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・対応期間:2003−2012年・テーマ:雇用及び労使関係・ホスト国:マレーシア・提起者:労働組合・業種:製造業16 OECD多国籍企業行動指針に関するトップ・サーモ・マニュファクチャリング(マレーシア)社における個別事例に係る日本連絡窓口の初期評価(2023年3月31日最終アクセス、https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/ 000194205.pdf)。 参考文献:各事例の報告書(脚注6から16)を参考に筆者作成。事例11.金属産業労働組合(MIEU)から依頼を受けたマレーシア労働組合会議(MTUC)による、トップ・サーモ・マニュファクチャリング(マレーシア)社(TTM)(日本に本社を置くサーモス株式会社の関連会社)に関する問題提起16提起された問題の概要:1.組合員の解雇、2.組合員に対する差別的慣行の実施、3.人的資源省への協力を拒否、4.MIEUを認めるプロセスを妨害、5.MIEUの組合員の範囲に関する労使関係局の受け入れを拒否、6.組合を認めるための人的資源大臣の命令の拒否、7.司法プロセスを乱用することでフラストレーションを引き起こし遅延させた、として問題を提起した。手続きと結論:日本NCPはマレーシア国内における司法手続の進捗状況を踏まえつつ、関係者との意見交換等を実施し、初期評価を行った。マレーシア国内における司法手続において、TTM社側の敗訴が確定した後、2011年7月にTTM社とMIEUの間で労働協約が締結された。そのため、提起された問題は関係当事者の間で解決に至ったとして日本NCPは初期評価のみで対応を終了した。634.考察と今後の研究課題4. 1 考察 ILOの多国籍企業宣言とOECD多国籍企業行動指針の関係について特筆すべき点は、以下の4点である。1点目に、同行動指針の「Ⅴ章 雇用及び労使関係」がILOの多国籍企業宣言を直接参照しており、この章に関する問題提起が数多く見られた点である。全NCPが対応した事例で提起された問題の約4割が労使関係に関する内容であり、日本NCPが対応した事例では、全11件中9件で同章に関する問題提起がなされていた。2点目に、NCPが公開する情報が、多国籍企業宣言のツールによって公開される情報よりも具体的である点である。多国籍企業宣言の地域別フォローアップで作成される報告書は、各国の政労使の取り組みの概要や関連する基準の批准状況等を報告している一方、個別具体的な労使の取り組みに関する情報は掲載されていない(ILO, 2022b)。同様に、ヘルプデスクの報告書では、誰がどのような内容について質問をしているのかについての大まかな状況は把握できるものの、詳細な情報については公開されていない。また、企業・労組間対話についても、どのような対話が行われているのかについての詳細な情報は見当たらない。一方、NCPが公開する情報については、問題提起者や被提起企業として具体的な組織名が公開されるとともに、多くの事例において、どのような問題が発生しているかを把握できるような情報が公開されている。実際、手続き中の事例6を除き、日本NCPが関与した全ての事例において、問題提起者及び被提起企業の具体的な組織名が公開され、提起された問題及び問題に対する手続きに関する情報が公開されていた。

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