29 東アジアにおける経済発展は外国から工業の知識や技術を導入し、外国に追いつく特徴が付けられ、それ30 鈴木(2000:36)。をキャッチアップの発展と言う。44キャッチアップ段階29と定義し、労働集約的部門、資本集約的部門と知識集約的部門の投資発展経路をそれぞれ図2の「メゾIDP-a」、「メゾIDP-b」と「メゾIDP-c」曲線のように描き、各部門の直接投資の流入と流出を表している。各部門のNOIはU字型のような形状となり最初はマイナスであるが、のちにプラスに転じる。第1段階から第3段階において比較優位産業が相次いで登場する。ポーター(Porter)の競争的発展の段階論では、一国の発展段階は生産要素の賦存比率が変化するにつれて発展パターンが変化することを提示した。第1段階では天然資源や単純労働力が豊富なため「ファクター推進型」の発展であるが、第2段階では物的資本が増加するとともに「投資推進型」の発展に展開する。その後、第3段階では教育水準の上昇に伴い人的資本が増加し「イノベーション推進型」の発展段階になる。第1段階から第3段階までは、国の競争優位がグレードアップし経済は成長する。第4段階の「富推進型」は、過去の累積的投資が優位性として存続するが、経済発展の停滞や衰退を迎える段階である30。小澤(Ozawa)は、1992年に前述したポーターの競争的発展の段階論を基に、要素賦存比率の変化に伴う国内の比較優位産業の出現と直接投資パターンの変化を加えた。ポーターが定めた最初の3段階において、生産要素の賦存比率が①天然資源と労働力、②物的資本、③人的資本の順で潤沢になる。要素賦存比率の豊富さにより、国内の比較優位産業が①天然資源ベースの活動もしくは労働集約的製造業、②中間財及び資本財の産業とインフラ建設、③R&D活動の順で出現する。また、要素賦存比率の変化に伴い、対内直接投資が①要素探求型、②市場志向型、③市場と技術の志向型に変化するのに対して、対外直接投資が①貿易支援型と資源探求型、②低コスト労働志向型、③市場志向型と技術志向型へと展開する。また、国際化の段階説に関しては、Johanson & Vahine(1977)のウプサル・モデルを挙げることができる。ウプサル・モデルでは、多国籍企業の外国市場における知識と経験の蓄積能力に焦点を置き、立地選択や市場参入のメカニズムで企業の国際化活動を説明している。多国籍企業は現地市場に関する知識を持たない弱点を克服するために、まず本国に近く文化や言語が類似する市場に製品を輸出する。特定市場に輸出する経験から、その市場に関する知識が蓄積されると、より多くの経営資源を投入する。資源の追加的投入により、当該市場に関する知識を深めることができれば、多国籍企業はさらに地理的に遠い市場に直接投資を行い、外国で製造活動や販売活動を行う。要するに、多国籍企業の直接投資や国際化の展開がノウハウの蓄積につれて段階的に拡大するのである。しかし、Welch & Luostarinen(1988)等の研究では、いくつかの段階を飛び越し、より速いスピードで国際化活動を行う企業の存在を観察し、国際化の段階説は永遠に不変なものではないことを発見した。
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