多国籍企業研究第16号
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3. 3 投資の発展経路と段階説対する直接投資額を差し引いた値である。27 劉(2009)。28 投資の純流出額(NOI: Net Outward Investment)とは、本国が外国に対する直接投資額から外国が本国に出所:田中(2009:183-184)よりまとめ。注: 折線の点線はダニングの投資発展経路、実線は小澤の部門別の投資発展経路を示す。縦軸のOutward FDIとInward FDIの間の横線は投資の純流出額のゼロ点を示す。図2 投資発展経路(IDP)431980年代頃から先進国の企業を対象とした研究は、投資の要因といった静的な分析から投資の発展経路や国際化の段階論といった動的な分析へと舵を大きく切った。先進国の企業の投資経路等に着目した研究は、投資発展経路(Dunning, 1979)、競争的発展の段階論(Porter, 1990)、要素賦存比率の変化(Ozawa, 1992)、部門別の投資発展経路(Ozawa, 2005)等がある。ダニング(Dunning)は、1979年に投資発展経路(IDP: Investment Development Path)を提起し、その後1988年に投資を5段階に分けてモデル化した27。ダニングの投資発展経路は図2に示すように一国の投資の純流出額(NOI)28が一人当たりのGNPの成長につれて変化する。横軸の第1段階では直接投資(FDI)の流入と流出がともに少ないため、一国のNOIはゼロに近い。第2段階ではFDIの流入が増加するが、FDIの流出が少ないため、NOIはゼロ点以下に減少する。第3段階ではFDI流出が増加し、その増加の度合いがFDI流入のそれを上回るので、NOIはゼロ点に向かって上昇する。第4段階ではFDIの流入が減ると同時にFDI流出が大幅に増加するため、NOIはゼロ点以上に上昇し、同国は先進国の水準に到達する。第5段階では経済成長が一服し、海外への投資流出が減るとともに、先進国同士が相互に投資し合うため、NOIは減少する。それ以降、投資発展経路曲線は小刻みに上下する。小澤(Ozawa)は、2005年に小島の雁行形態論と産業の比較優位論をダニングの投資発展経路に応用し、部門別の投資発展経路を加えた。小澤は、ダニングの第1段階から第3段階までを産業の

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