多国籍企業研究第16号
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19 共特化とは、資産の間に双務的依存関係を生み出すことを言い、共同利用によって価値が高まる(Teece, 図表6 ダイナミック・ケイパビリティに内包される「エスニック・マリアージュ」2013, p.16, p.44)。エスニック・マーケティングを活用した海外市場参入から市場全体攻略へ      ― Grupo Bimbo社による買収した経営資源を活用した米国市場攻略 ― 杉村 亮介32(出所)筆者作成いて、エスニシティ間(または異文化間)に大きな相違がある場合に、その相違を尊重し活かしながら市場拡大を達成するための新しい概念であり、既存経営資源と新規経営資源が連続して組み合わされる(複数のステップの)中で、各ステップが連動することによって相乗効果を生み出しながら、次なる経営資源を創出する能力のことである。異なるエスニシティ由来の製品ブランド(既存ブランドと新規獲得ブランド)が、それぞれの対応する市場(エスニック市場とメインストリーム市場)を拡大していることから分かるように、異なるエスニシティ由来の既存ブランドと新規獲得ブランドが、それぞれのエスニシティのアイデンティティを堅持している点に最大の特徴がある。「エスニック・マリアージュ」は、ダイナミック・ケイパビリティの概念に内包される様々なタイプの1つとして位置付けられる(図表6)。Teece(2013)は、ダイナミック・ケイパビリティとは、急速な環境変化に対処するために、機会を感知・捕捉し、内部・外部ケイパビリティの統合・構築・再配置を半連続的に実行するための組織・経営者のケイパビリティ、つまり企業が市場を形づくり、長期的(持続的)な競争優位を確立するための企業固有の統合的なメタ(高次の)・ケイパビリティであると論じている。さらに、Teece(2013, p.37, p.42)は、共特化19、及び再配置(ないし転換)による資源活用の相乗効果を論じている。つまり、「エスニック・マリアージュ」の基本は、ダイナミック・ケイパビリティである。本稿は、エスニシティ(異文化間またはエスニック市場間)の違いに焦点を当てることによって、

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