多国籍企業研究第16号
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15 Guillén and García-Canal(2013, p.24)は、「他の大手ベーカリーと一線を画すビンボ社の最大の強みは、何万もの販売拠点を含む複雑な流通ネットワークを管理するための、長年の経験に裏打ちされた方法論である」と述べている。エスニック・マーケティングを活用した海外市場参入から市場全体攻略へ      ― Grupo Bimbo社による買収した経営資源を活用した米国市場攻略 ― 杉村 亮介28つ「現地プレゼンス力」が「本国での製品ブランド」の販路拡大に貢献した。優良メーカーのコーポレートブランドに由来する「現地プレゼンス力」は、買収先企業の営業部隊や顧客ネットワーク(市場シェア)により効力を発揮した。ステップ④は、「買収先の現地製品ブランド」を、新しい地域(未開拓地域)のメインストリーム市場(以下、新メインストリーム市場)へ広めていく段階、または新規販路の開拓に活かす段階である。既存経営資源の「高度な流通オペレーション能力15」と組み合わされることによって可能となった。この市場拡大では「拡大された現地流通網」と「拡大された現地プレゼンス力」が生み出された。ステップ⑤は、既存経営資源の「本国での製品ブランド」が、④で生まれた「拡大された現地流通網」、および「拡大された現地プレゼンス力」と組み合わされることにより、新メインストリーム市場の地理的商圏内においてエスニック市場に浸透した。なお、ステップ④で挙げた既存経営資源の「高度な流通オペレーション能力」は、ステップ③及び⑤においても重要な役割を果たしている。ビンボ社は1945年創業当時から流通オペレーション能力を磨き続けてきた。ビンボ社は創業にあたり、当時のメキシコ市場のニーズ、すなわち「顧客へのタイムリーで質の高い対応」と「商品の鮮度」を第一に考えた(Bimbo, 2020b, p.46)。これらのニーズを満たすために、(製造する製品とその包装の特徴を決め、さらに)直販システムを導入し、(1945年創業当時)売れ残った製品を2日ごとに入れ替えた(Bimbo, 2020b, p.46)。Casanova and Fraser(2009, p.98)は、「ビンボ社は、1980年代後半にメキシコ全土に広範な販路と流通網を持ち、毎日42万件の配送を行なっていた。(中略)ビンボ社はメキシコの流通ネットワークを掌握していた。同社は流通ネットワークの効率性と最適なオペレーション能力を促進するための長期的な投資にも定評がある。(中略)1990年代にはコンピューターを導入して流通システムを近代化し、商品をジャストインタイムで提供した。」と述べている。また、当然ながらビンボ社の資金力は全てのステップで活かされている。買収2、3、4件目は、買収1件目のステップ②〜⑤を繰り返していた。買収2件目のステップは、②’、③’、④’、⑤’であり、買収3件目は②’’、③’’、④’’、⑤’’となり、買収4件目は②’’’、③’’’、④’’’、⑤’’’と示した。ビンボ社による買収1件目の市場拡大イメージ、および買収1件目と買収2、3、4件目の違いを図表3で示した。買収2、3、4件目では①が無くなる。さらに、買収の回数を重ねるにつれて、買収先の事業規模(市場シェア)が大きくなっていることを右肩上がりの矢印で示した。図で使用している番号は、図表2と一致させてある。

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