多国籍企業研究第16号
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5,798百万ペソ)をあげた(Bimbo, 2014b, p.85)。14 ダニエル・セルヴィッチェは、1997年からビンボ社のCEOを務め、ビンボ社の米国事業拡大を主導した。エスニック・マーケティングを活用した海外市場参入から市場全体攻略へ      ― Grupo Bimbo社による買収した経営資源を活用した米国市場攻略 ― 杉村 亮介264.米国のエスニック市場からの拡大と経営資源の組み合わせ(1)エスニック市場からの拡大と市場全体の攻略p.141)。Sara Leeブランドを全米メインストリーム市場向けのブランドとして位置付け、流通を拡大した(Bimbo, 2014a, p.209)。この買収により、ビンボ社の米国での市場シェアは、包装パン市場で19%から30%に拡大した(Bimbo, 2014b, p.43)。米国パン市場で売上No.1の地位を確立し、同時に、世界最大のパンメーカーになった(Bimbo, 2015b, p.43)。大型買収3件に共通して、次の2つがあげられていた。まず、買収によりアングロサクソン系の人々の間でのプレゼンスを拡大することができ、米国におけるビンボ社のプレゼンスを強化することができた点である(Bimbo, 2003b, p.25; 2010b, p.37; 2011b, p.38)。2つ目は、ヒスパニック系の人口が大幅に増加している米国において、メキシコの一流ブランドとBBU社の事業を統合できた点である(Bimbo, 2003b, p.25; 2010b, p.37; 2011b, p.38)。BBU社は、ビンボ社のメキシコブランドを米国で販売しており、買収先の販売ルートを活用することで、米国での市場を大幅に拡大した(Bimbo, 2003a, p.11; 2012b, p.38)。米国での最も大きな成長は、ヒスパニック系消費者向けのメキシコ製品の販売から継続して生まれており、このセグメントへよりアプローチするために、多数の新ルートを開設した(Bimbo, 2007a, p.8)。ビンボ社は2013年度に、EBITDAマージンで7.3%の利益率(売上高79,767百万ペソ、EBITDA ビンボ社CEOのダニエル・セルヴィッチェ14(以下、ダニエル)は、米国のメキシコ系住民の顧客ロイヤルティの高さを、次のように説明している(Siegel, 2007, p.6)。「私たちが米国で(メキシコ系住民に)売っているものは、基本的にノスタルジアである。私たちは強い絆で結ばれた彼らの歴史の一部を販売している。私たちは米国におけるメキシコブランドの強力なインパクトを見ており、そのインパクトは、メキシコ国内を凌ぐほどである。」ダニエルは、ビンボブランドに対する顧客ロイヤルティは、メキシコ国内のメキシコ人よりも米国内のメキシコ系住民の方が高いと述べている。ダニエルは、その理由として、ノスタルジア(望郷の念)という言葉を挙げ、米国のメキシコ系住民がメキシコに住んでいた頃に慣れ親しんで食べていた故郷の味(と記憶)が、顧客ロイヤルティを高めていると言う。一般的に、海外在住の人々が母国の食品を恋しくなる心境に通じる。上述したように、パンはエスニック・エンベデッドネスが極めて強い食品であるため、海外のエスニック市場攻略において多大な恩恵を受けられる。これが、海外市場においてエスニック・マーケティングを活用する意義の本質である。ビンボ社による米国市場全体の攻略ステップは、図表2のとおりである。

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