多国籍企業研究第16号
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(2)ビンボ社の米国市場での拡大期13 2008年12月10日発表のプレスリリースのタイトル名「BimboがWeston Foods, Inc. を買収し、米国ベーカリー業界のリーダー企業の誕生」より。Microsoft Word - PR WFI Final.doc(grupobimbo-com-custom01-assets.s3.amazonaws.com)(アクセス日)2021年8月11日エスニック・マーケティングを活用した海外市場参入から市場全体攻略へ      ― Grupo Bimbo社による買収した経営資源を活用した米国市場攻略 ― 杉村 亮介252002年、ジョージ・ウエストン社の米国西部のベーカリー事業(以下、WFIの米国西部事業)を、6億1千万ドルで買収した(Bimbo, 2003a, p.11)。BBU社は米国第4位、米国西部でのリーダーとなり、2001年比73.3%増の売上成長を達成した(Bimbo, 2003a, p.11)。袋入りパンのOroweat(オロウィート)ブランドとテキサス、コロラド、カリフォルニア、オレゴンの5工場、約1,300ルートに及ぶ効率的な直販網などの資産を獲得した(Bimbo, 2003a, p.35)。さらに、ビンボ社はThomas’(トーマス)ブランドなどの米国西部における販売権を取得した(Bimbo, 2003a, p.35)。ビンボ社は、2002年の買収後、有名ブランドでの米国の大型スーパーへのアクセスを活用して、ビンボ社のメキシコブランド製品を販売した(Siegel, 2007, p.6)。2009年には、ジョージ・ウェストン社から米国東部のベーカリー事業(以下、WFIの米国東部事業)を買収した(Bimbo, 2010b, p.37)。ビンボ社はプレスリリース13で次のように述べている。「主に東海岸を拠点としていたWFIの事業は、地理的にも商業的にもビンボ社の既存事業を補完し、ビンボ社が2002年にWFIの米国西部事業を買収したことに続くブランドポートフォリオの再構築、全米規模の小売業者とのより強固なパートナーシップを築くための全国的なプラットフォームを生み出す。WFI社の流通モデルを統合することにより、ビンボ社の米国事業は、新規市場への拡大、ビンボ社のヒスパニックブランドの浸透の加速、イングリッシュマフィンやベーグルなどのカテゴリーの未普及市場における潜在的成長力の活用が可能となる。(中略)買収金額は、23億8,000万ドル、22の製パン工場、4,000以上の配送ルートを含んでいる。」2010年11月9日、ビンボ社はSara Lee社(以下、サラ・リー社)のパン事業を9億5,900万ドル(暫定価格)で獲得することに合意したと発表した(Bimbo, 2012a, p.141)。サラ・リー社は、米国の包装パン市場において11.6%のシェアを持っていた(Bimbo, 2011b, p.38)。買収契約には、米国、アジア、アフリカ、東欧・中欧のベーカリー製品に使用されるSara Leeブランドのライセンス無料と、それぞれのローカル市場で高い認知度を持つ地域ブランドがリストに含まれていた(Bimbo, 2012a, WFIの米国東部事業の統合と買収したリージョナル・ブランド製品の全米配送により、売上高は前年比ほぼ3倍となった(Bimbo, 2010a, p.25)。BBU社とWFIの米国東部事業の統合は、主にヒスパニック系住民をターゲットとしている小売業者に向けた包装パンおよび菓子パンの製造、流通、販売、およびメキシコからの輸入品の流通を主要事業としている(Bimbo, 2011b, p.36)。BBU社は、米国の包装パン市場において市場シェア21%となり(Bimbo, 2011b, p.36)、ビンボ社はアメリカ大陸で売上No.1の製パン会社となった(Bimbo, 2011a, p.1)。

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