社10の元マネージャーのペドロ・ノヨラ氏を招聘し、ヒューストンで５つのルートを持つ流通会社を立ち上げ、パンの流通網の構築に成功した（Silvia, 2008, p.314）。10 マリネラ社はビンボ社の主要子会社（Bimbo, 2020b）。11 アングロサクソン系住民向け市場は、米国のメインストリーム市場である。12 マリネラ（Marinela）は、ビンボ社の菓子ケーキ・クッキーなどのブランド。エスニック・マーケティングを活用した海外市場参入から市場全体攻略へ ― Grupo Bimbo社による買収した経営資源を活用した米国市場攻略 ― 杉村 亮介24その後、ロベルトとペドロ・ノヨラは、カリフォルニアに移り、ロサンゼルスに代理店を作り、８年間にロサンゼルスからサンフランシスコまでの米国西部に200以上のルートを作りあげた（Silvia, 2008, p.314）。最初はメキシコシティで作られた製品だけを売っていたが、その後モンテレイ、チワワ、メヒカリ、ティファナで製造した製品が、そのロサンゼルスの代理店を通じて販売されるようになり、市場の拡大のための重要な手段となった（Silvia, 2008, p.314）。Roberto（2009, p.21）は、「テキサス州のヒューストン、カリフォルニア州のロサンゼルスの拠点は、小さな販売会社」と述べているが、ビンボ社にとって、米国進出の大きな足掛かりとなった。さらに、Roberto（2009, p.21）は、「トルティーヤ、トウモロコシ、小麦の市場開拓に取り組み、そのことが、テキサス州に10工場を持つ100年の歴史を持つファミリービジネス、Mrs. Baird’s社（以下、ベアード社）の買収につながった」と述べている。ベアード社を買収した後、子会社を管理することが複雑になり、管理運営をより明確に行うための組織が必要となった（Roberto, 2009, p.21）。1999年に、Bimbo Bakeries U.S.A.（以下、BBU社）が、フォートワースに設立された（Roberto, 2009, p.21）。これにより、メキシコの経営陣のもとで、米国事業全体がコントロールされる体制が整備された（Roberto, 2009, p.21）。ベアード社を買収したことで、BBU社はテキサス州で認知度の高いブランドを持ち、アングロサクソン系住民向け市場11の主要なプレーヤーとなった（Bimbo, 2001b, p.38）。BBU社の旧ベアード社は、テキサス州で最も影響力のある地域密着型のメーカーであり、州内シェアは28％を超えていた（Bimbo, 2001b, p.53）。また、BBU社は米国のヒスパニック市場（主にメキシコ系住民）に向けて、ビンボとマリネラ12のブランドでメキシコから輸出されている20種類以上の製品を販売した（Bimbo, 2001b, p.38）。（米国において）ビンボとマリネラの業績は傑出しており、健全かつ収益性の高い成長を実現した（Bimbo, 2002a, p.12）。米国のパン市場の特性上、参入に非常に大きな障壁となる主要流通チャネルを利用することで、ビンボ社の米国における事業を強化することが可能となった（Bimbo, 2001b, p.27）。また、ビンボ社は、テキサス州内でベアード社の名前を使って販売を続けることを宣言し、他地域でベアード製品とビンボ製品を立ち上げるためにベアード社をスプリングボードとして使う意図があることを表明した（Goldberg et al., 1998, p.7）。Mrs. Baird’sブランド（以下、ベアードブランド）を活用することによりメインストリーム市場をさらに拡大するとともに、その拡大された商圏に対してビンボ社のメキシコブランドをメキシコ系エスニック市場に浸透させた。
元のページ ../index.html#28