多国籍企業研究第16号
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(1)ビンボ社の米国市場での確立期エスニック・マーケティングを活用した海外市場参入から市場全体攻略へ      ― Grupo Bimbo社による買収した経営資源を活用した米国市場攻略 ― 杉村 亮介図表1 狭いエスニック市場から抜け出すための経営資源の組み合わせ23(出所)筆者作成3.ビンボ社の米国市場開拓のケース本稿は、探索的ケーススタディにもとづく質的研究方法を採用している。ビンボ社が公開しているBMVレポートの歴史記述を中心に、同社の年次報告書、創業者の自伝書、創業者へのインタビューをまとめた著書などを参考に、米国市場参入から市場全体攻略までを史的にまとめた。その上で、エスニック・マーケティング、及び経営資源の組み合わせの観点からデータ処理及び分析を行なった。2つの時代区分に分け、第1に米国市場への参入前から参入後の確立期、第2に米国市場での拡大期を記述していく。ビンボ社はメキシコ市場で成功し、成長に向けて米国市場への進出を考えていた(Silvia, 2008, p.314)。創業メンバーの1人であるロベルト・セルヴィッチェ(以下、ロベルト)は、ビンボ社の米国市場への参入前に、ビンボ社製品を米国市場で販売して流通業者に次のような不満を抱いていた(Silvia, 2008, p.314)。「“1969年にハーバード大学に留学したときから、米国が私たちの自然な市場であることは明らかでした。”1983年には、第三者がビンボ製品の流通を開始することを試みた。ヒューストンでパンやお菓子を配達させたが、失敗した。”彼らはとても不誠実なディストリビューターで、支払い期限を守らず、私たちは損をしました。”」ロベルトは1969年には直感的に米国市場を次の市場として意識しており、そのために、米国市場でビンボ社製品を販売しようとする複数の流通業者に米国市場での販売を認めた。しかし、流通業者の不誠実な対応から、自社での米国市場開拓へと切り替えていく。1985年、ロベルトは自分で流通ルートを開拓することを決意する(Silvia, 2008, p.314)。テキサスでのルート開設には、マリネラ

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