多国籍企業研究第16号
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液晶技術を用いた中間財企業の製品プラットフォームの構築プロセス 千島 智伸(出所)筆者作成図5 液晶パネルの製品プラットフォーム166.結論た動きが部品・材料サプライヤーの製品差別化にも同時に影響を与えている。製品供給量を増やすためのモジュール化(マス・プロダクション)は、液晶パネルという1つの共通した製品基盤を複数の製品分野に展開し、セットメーカーの製品設計段階に関与したことが大きい。そのため、SECとSONYという液晶TV以外の製品に対して液晶パネルの供給規模を確保することができたのである。本研究を通じて得た成果は3点である。第1に、液晶産業における企業間の技術協業で日系電子部品・材料メーカーとのインテグラル化、および、セットメーカーとのモジュール化対応を通じ、両アーキテクチャに如何に対応するか、そのパターンを示した。第2に、プラットフォーム・リーダーのような中核企業の視点で見た場合、液晶パネルを中心に多様な補完企業が生まれ、参加する企業の役割や獲得できる価値がどのように変化するか確認した。第3に、基盤技術が複数市場に展開され、企業がそれを別市場に使うことで顧客との接点を持つことができるように、製品プラットフォームで中心的機能を持つ企業が範囲の経済性を得ていることを確認した。以上のことから、「液晶産業における製品プラットフォームの構築を通じ競争優位が成立するメカニズムをどのように構築したのか」という本稿のRQに対する解は、「液晶パネルの開発に優れた材料技術と生産工程技術をプロセスに取り込み、補完すべき機能を外部資源から獲得し、複数の異なる市場に供給できる能力構築を推進したこと」である。

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