(3)各SQの解に対する因果関係について液晶技術を用いた中間財企業の製品プラットフォームの構築プロセス 千島 智伸14スにおいて得られた収益によって他の産業向けのパネル開発へ事業投資を行い新たな取引を構築しようとする。パネルに使われる電子部品は共同購買で安く買い、画質を鮮明に処理する核心部品や半導体メモリーを相互に使用する。アライアンスによって獲得した成果は、①半導体(SEC)と映像信号処理技術(SONY)の相互確保(外部資源の獲得)、②両社の高画質化への取組みによる組織学習のルーティン化、③生産数量増に対応する安定供給が規模の経済性につながり価格を抑制、④運営費用抑制による次期モデル開発費の確保、などが競争優位性に働いた点である。そこで、以上のことを集約し、「インテグラル化とモジュール化の両アーキテクチャに適切に対応する戦略によってリファレンス性(標準性)を強化し、複数市場へビジネス機会を拡大させる」、これを命題4とする。これまで抽出した事実としての命題は、インテグラル化では液晶パネルの多様な機能を高める目的で複数の企業と協業し、モジュール化は特殊性の高い設備を使い複数のガラス基板から取れるパネル枚数を最大化することで、パネルの製造コストの抑制を図る。アライアンスによって、外部資源を効果的に加え競争力の高い技術資源を確保し、パネルの生産規模と機能差別化を同時に追及する。そして、液晶パネルが複数の異なる市場との接点を持つことで標準性が高まり事業機会の拡大につなげ、セットメーカーの採用に繋がる。インテグラル化とモジュール化の両面アーキテクチャに対応することと、アライアンスの影響によってコスト競争力があること、この2点を有することが液晶パネル事業として価値を生み出す要素となる。本研究は、「液晶技術を用いて競争優位が持続する企業は、どのようなプロセスで製品プラットフォームを構築したのか」というRQを設定し、分析を通じて得られた複数の命題がある。しかし、こうした命題に関係する事象がなぜ起こったか、幾つか共通する条件を考察したい。SDCは、まず部材メーカーとパネルの開発で協業しインテグラル化を強化する。そして、セットメーカーとはサイズの異なる共通したパネル構造を決め生産準備を進める。これは、市場の需要が高まり液晶パネルを用いた製品開発によって、多様な顧客との接点確保に向かうためである。そして、アライアンスで連携しているSONYと技術や生産で協業し、ここで得た学習効果を別のパネル開発等にも援用し、生産数量を高め規模の拡大を図る。モジュール化が進むと、生産に関係する時間や規模が効率化され、製造コスト抑制がパネル価格にも影響する。インテグラル化によって差別化された技術開発とモジュール性のある生産効率とのバランスを取り、複数市場へビジネスを拡大する動きに繋げ、このようなプロセスで市場との接点を得る。そして、品質を向上させ多様な産業で適用される機会が増えた事で、新たな顧客が希望する情報や引き合いを受けることが可能となる。両立が難しい品質の向上とコスト抑制という課題を乗り越え、新たな価値を生み出すこと、つまり、製品プラットフォームが成立するには、以下の3つの条件を持つことが必要である。① モジュール化の中で役割を決め、どこでコストを抑制するかを決めている
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