(2)SQ2について液晶技術を用いた中間財企業の製品プラットフォームの構築プロセス 千島 智伸13り、パネルの互換性が容易になるよう開発グループを細分化させている。最終形として液晶TVを組立てる時に各グループが同じ規格化されたガラスを使い繋がる。以上のことから、SQ1に対する解は部材メーカーとの関係性と、セットメーカーとの関係性に分類する。これは、液晶パネルが完成品の技術的な土台となる「製品構造や基盤となる中心機能」として複数の製品や製品群に標準的に用いられ、SDCがパネルに電子部品や材料を提供する企業と製品開発の初期段階で協業を進めていたこと、および、セットメーカーへの供給では、SONYとのアライアンスを締結したことで生産規模の確保に大きな影響を与えていたことが影響している。したがって、SQ1に対する命題を2つにわけ、まず「液晶パネルのインテグラル化は、部材メーカーと中間財企業が製品開発の初期段階で相互の技術に関する知識をすり合わせるときに効果を発揮する」、これを命題1とする。次に、「液晶パネルのモジュール化では、部材調達の規模を高め完成品に仕上げるモジュール工程でセットメーカーと協業するときに効果を発揮する」、これを命題2とする。小川(2008)は、「完成品がモジュラー型アーキテクチャの要素を持つ場合、製品に構成される基幹部品・部材を核に、オープン環境で周辺の技術を統合する傾向がある」と主張した。これは、製品の基盤となる核心技術によって、補完機能である部材メーカーと各種機能について相互に関連し影響することを意味している。本研究は、パネルを構成する電子部品・材料メーカーとは、パネルの製品価値を高める機能の開発を徹底的に行ったことが確認できた。また、多くのTVメーカーに採用を促すために、受注生産のように都度相手の要求仕様に合わせ検討を行う方法ではなく、パネルサイズをあらかじめ決め生産スピードと量産数量を上げる方法で対応した。つまり、技術の擦り合わせとなるインテグラル化と、繋ぎ合わせや企業間連携が進むモジュール化に対応し、複数の市場へパネル製品を先んじて供給する。液晶パネルを構成する電子回路や液晶材料を組み合わせるセル工程では複数の部材メーカーと、パネルから完成品をつなぎ組立てるモジュール工程はパネルを買い完成製品化するセットメーカーとの協業関係が作用する。これらは、Gawer and Cusumano(2002)が示した「複数間市場と取引関係の構築」で、異なる市場・複数の市場や関係企業から製品開発に必要な情報、いわゆる顧客の声を直接受けることができる。以上のことから、SQ2に対する解を、「アライアンスによって、企業の成長に応じた組織形態を変化させ、生産規模の確保と複数の製品群に用いられるパネルの開発に繋げる能力」、これを命題3とする。液晶パネルは、他の市場や製品と接点を持ち、多くのビジネス機会を得るため、大規模資本を必要とする装置産業である。SDCはSONYとSECが投資負担を分け生産工場を運営するなどリスク分散を図り、TV用LCDパネルを確保する新世代ラインへの追加投資に加え、技術開発向けに資金を回す。SDCと取引を行う部材メーカーも同様に、開発案件ごとに技術強化を図り、液晶ビジネ
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