多国籍企業研究第16号
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(4)製品プラットフォームの形成液晶技術を用いた中間財企業の製品プラットフォームの構築プロセス 千島 智伸125.命題の抽出(1)SQ1について製品プラットフォームは、製品価値を高めるために単独で保有する機能を補完する別の製品や企業が存在する(根来,2014)。2つめのSQは、「同業種間による製品市場の拡大を目的としたアライアンスで、パネルの開発や生産規模の拡大が認められるが、どのようなプロセスで推進し、如何なる効果を獲得したのか?」であり、つまり外部企業とアライアンス連携で、製品の技術的土台となる液晶パネルの機能を補完し、競争優位を構築したかという点である。根来(2014)が「基盤型と媒介型に分類され、前者は各種補完技術やサービスと協業し顧客の求める機能を実現する基盤となり、後者はグループ内やグループ間の相互作用の仕組みを提供する製品やサービス」と定義しているが、需要・供給各サイドの参加者がプラットフォームから得る便益は、複数の製品や異なる産業間を共有し、相手サイドの参加者数にも関係して変化する。液晶パネルの場合、主要な電子部品・材料メーカーは、液晶TV以外の自動車や医療機器等の製品分野にも新たなパネル製品開発を進め、別の取引機会を獲得する。SDCはパネルを構成する電子部品・材料企業の技術力を援用し開発したパネルを、他産業や異業種分野の顧客向けに提供する。それができた理由は、①製品工程で最終メーカーと部材メーカーの間に位置取りする形で、異業種や他産業の製品開発ニーズ情報を得たこと、②これを取引関係にある電子部品・材料メーカーとセル工程で活用しているためで、情報媒介の機能を発揮し普及を促すTV市場と新たに収益を確保する他市場と、複数の需要に対応することに繋げたのである。インテグラル化では、セットメーカーの要求する品質水準の達成に向けて部材メーカーと技術協議を重ね性能評価を繰り返し、品質改善を図る。このような行動を繰り返すと、パネルと部材双方の技術知識が更新され、製品開発に関係する人員の知識が高まる。たとえば、液晶の主要機能を高める時に補助機能を構成する部材の設計情報の改善結果を反映させ、液晶の明るさの調節や色、耐久性、映像や電気信号への変換等、多様な機能を同時に成立させるようなバランス化を図る。部材メーカーとセットメーカーの間に位置するパネルメーカーは、部材側の開発部門と調整協議を重ねる際、パネル開発に必要な技術水準の情報、評価項目や優先すべき課題など重要な情報を開示し、その水準に到達するための可能性や改善すべき点を共同検討する。つまり、液晶パネルの機能を開発する過程で情報提供・共有を行い、電子部品・材料メーカーの多様な技術提案を引き出す協調的な行動を取る。それにより部材メーカーとセットメーカーの擦り合わせが進む。次にモジュール化は、パネルの製造装置カスタマイズ化と、ガラスモジュール化専用のラインを備え、複数のガラス基板にも共通して機能が発揮できる液晶材料を使う。パネルの構成部材には高い機能を持った電子部品を搭載し、機能を高度化させ他の産業商品に使うディスプレイでの開発も同時に検討する。製品アーキテクチャに基づく製品設計では、構成要素のモジュール化が重要とな

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