多国籍企業研究第16号
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7 Large scale integrated circuitの略。多層化・微細化に対応するため、素子の集積度を高くした半導体。(3)取引費用に与えるアライアンスの効果液晶技術を用いた中間財企業の製品プラットフォームの構築プロセス 千島 智伸11SECとSONY間で大型TV向け液晶が使用される製品需要の拡大へ対応を急ぎ、2002年に製造パネルの共同調達と核心部品の相互使用を通じ規模の経済を得る目的でアライアンス契約を交わす。2004年4月にS-LCDとして、両社の株式比率を50%に均等する方式で韓国・湯井に合弁会社を設立している。アライアンスを模索していた段階から締結に進んだ背景には、「両社の取締役級トップ経営層を中心に生産や開発に関する意見交換が締結以前から発生しており、両者の経営層がアライアンスによる効果を理解していたことが大きい」とインタビューによって確認が取れている。Yoshino and Rangan(1995)による企業間結合の分類によると、リスク要因と期待できる成果を検証し、両社が独立したままの状態でその成果を分ける「契約的結合」である。技術競争優位のある電子部品・半導体を相互に優先的に供給し使用するという条項により、互いの機会主義的行動(一方的な行動や契約解消)を抑止する。SONYが得意とする画像処理部品7(以下,LSI)と、SECの半導体(Memory)をパネルに組込み競争力のある技術資源を相互に確保したのである。表2の製品コストの内訳は、液晶パネルの原価は直接部材費に占めるコスト占有が76%を占めていることを示唆したもので、生産数量の規模、つまり量産が可能なプロセスが必要となる。SDCが供給する液晶ディスプレイは、基本的にはSECとSONYの完成品に適用されるため、部材調達時に大量の部品を購入し調達価格の引き下げを狙うボリュームディスカウントなどの活動にも影響を及ぼしている。液晶パネルは、他業界の製品とも接点を持ち多くのビジネス機会を得るため、大規模な製造装置が必要となる。SDCはSONYとSECが製造装置を設置するための投資を分担し、完成した液晶パネルをそれぞれの液晶TVの生産に適用するなどして、在庫リスクの軽減を図るなどの動きも見せている。市場への供給計画に基づき生産されたパネルは両社で比率を決め(およそ、SEC 55%:SONY 45%)引き取り、ラインの稼働率を維持する。それ以外の製品向けに使用されるパネル技術では、液晶TVの画面輝度(光点の明るさ)に影響するLED(バックライト)など周辺部位の開発も同時並行で強化を図る。LSIは、デジタル家電における液晶TV製品差別化のいわば心臓部品であり、パネルの基幹部品とLSIの性能評価が出るように既存のセットメーカーは、パネルかLSIのどちらかは自社で内製を行っているケースが多い。そして、共通の経営管理システムを使い、実務者が情報共有や生産オペレーションなどに関する改善アイデアや状況認識を図り、生産と開発の両面で活発な意思疎通に取り組む。これは、コミュニケーションをとる時に発生する確認や意見のすり合わせなど、そのような行動は生産計画と部品の購買計画を共有し両社が使用する電子部品の共同購買などに繋げ、原価節減に結び付くことになる。

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