多国籍企業研究14・15合併号
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4 農林水産省生活改善課が、1981年「地域内食生活向上対策事業」において、地産地消の考え方を定義して5 英国で1852年に建造された貨物船SS John Bowesが、世界最初のバラ積み船であり、当初は鉄鉱石の輸送を6 Table 1.6 Dry bulk trade 2019-2020, UNCTAD (2021) Review of Maritime Transport7 1870年代に食肉の国際間輸送の目的で建造されたと言われている。いる。目的とした。42.地産地消の考え方から農作物貿易の促進へ「地域で生産されたものを地元で消費すること」4とする地産地消の考え方の背景には、収穫された農作物の鮮度を維持することの難しさ、収量と収穫の不安定性、収穫から消費までのコールド・チェーンなど輸送方法の制約や、輸送コストの高さの問題などの要因があると考えられる。これらの施策から、今後はより具体的な販売目標の設定、対象地域や品目の明確化、輸出方法を検討すると共に、現地での販売にも注力すべきことなど、積極的な取り組みの重要性が示されている。農作物等の輸出促進に関する先行研究においても、農作物輸出に関する「攻め」の戦略が求められる中で、従来は輸出マーケティングや物流の観点からの研究に限られていることから、石塚・神代(2013)は、輸出の継続的拡大に向けた課題を抽出しながら、今後具体的な対応策を構築することが必要であると指摘している。同様の視点から、福田(2016)は、輸出産品としての農作物の製品差別化に関する研究とそれに基づく戦略構築を行うことの重要性について述べている。また、福田(2013)は、これまでの政府の促進策にも関わらず、なかなか実際には輸出が進まなかった一因として、農作物輸出に対してあくまでも国内市場における「需給の調整弁」と位置付ける産地が多く、国内での取り組みにばらつきがあったことを挙げている。さらに生鮮品である農作物の特性を考えた輸送手段として、後藤(2020)は一定の温度管理を維持するためのコールド・チェーン等物流の一貫性と輸出入港における港湾設備などの環境整備の拡充の必要性を挙げており、野見山・中川(2018)は、戦略的輸出に向けてブランド化、品質向上、多様なチャネルの開拓、産業育成を進めることなどを、今後の課題として挙げている。政府や農林水産省の政策にも述べられているように、農作物の輸出については、相手国の法律に沿った様々な規制への対応や現地での輸入に伴う関税も含めて、多くの貿易上の課題を越えることが必要となるために、省庁を超えて、また官民一体となった連携と協力が求められる。鮮度維持が求められる農林水産物の貿易を可能にしたのは、幾多の輸送方法のイノベーションにある。まず大量の穀物などが低コストで輸送されているのは、19世紀半ばの「バラ積み船(穀物運搬船)5」の開発によるものであり、現在小麦、大豆、とうもろこしなど年間5.1億トン(2020年)6が世界で輸送されている。その後、特に生鮮品の輸送を可能にしたのは、19世紀末に開発された「冷凍船7」であり、鮮度を維持したままに、食肉や果物の輸出が可能になった。その結果、多国籍企業の創成記にあって、米国のユナイテッド・フルーツ社(チキータ・ブランド)が、中南米諸国でのバナナ・プランテーション経営を展開し、自社の冷凍船隊によりバナナなどの収穫物の輸出を行う

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