4−2 本格的な輸出に向けて11● 輸送コスト(航空・海上コンテナ運賃)第2節でも示したように、生鮮品の輸送に使用されるリーファーコンテナの運賃は、通常の海上コンテナ運賃と比較して、3割から6割程度高く、より高機能で鮮度維持を高める特殊なコンテナの使用によって、運賃はさらに高くなる。出荷量がコンテナを満載にできるほどの量に届かないことも多く、それぞれの商品に適した温度帯やエチレンガスなどの発生から、異なる品目の合積み(コンソリデーション)は容易ではない。また航空輸送になると、それらの運賃をはるかに上回る。さらに海上運賃と航空運賃は、季節性や需要と供給による市況の影響を受けて、大きく変動することから、輸出コストの不安定な要因となっている。● 輸入国での規則(植物検疫規制、残留農薬・添加物、品質管理、表示ラベルなど)海外市場への参入障壁として、国内の市場保護を目的とした輸入関税に加えて、様々な規制が存在する。植物の病害虫の侵入を防ぐための植物検疫などの規制、使用可能な農薬の種類や使用の上限量を規定した残留農薬や添加物の指定、HACCP (Hazard Analysis and Critical Control Point)などの認証や食品衛生の品質管理面での証明書の取得、国内基準に沿った表示ラベルなどの貼り付けなどが、各国の基準に沿って求められる。● 市場の開拓(流通チャネルへのアクセス)多くの商品の海外販路の開拓や拡大には、日本国内および現地で開催される食品見本市などへの出品、JETROなどを通じたプロモーション活動、商社などを介してまた独自にさまざまな商談機会を探索する方法がとられている。また市場開拓に向けた次の段階として、ターゲットとする市場や店舗における試験的な販売を通じて、継続的な出荷に繋げることが意図される。しかし、農作物の商品の多くは、産地などの事業者による限られた品目ごとの市場開拓であり、参入当初の少量出荷に対して多額の初期コストの投下を余儀なくされる。上述の通り、現地市場で農作物を販売する流通チャネルが確保されたとしても、農作物流通に関する固有の課題に加えて、輸出にはさらに多くの問題が存在することがわかる。特に輸出に伴う規制やさまざまな障壁に対する対応と、出荷から現地の店頭に並ぶまでのサプライチェーンの管理の難しさとして、生鮮品輸送に伴う鮮度の維持と安全性やコスト面の問題が存在する。今後の日本からの農作物輸出の促進には、生産から消費までを見据えながら、戦略的な取り組みを考えていく必要がある。まず第一に求められるのは、輸出商品としての農作物の栽培と収穫及び産地での対応である。今日でも多くの産地においては、農作物輸出は国内消費を補完するものと位置づけられている。現時
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