多国籍企業研究14・15合併号
14/26

104.農作物輸出の課題4−1 輸出に伴う課題農作物には、元来地産地消が基本とされた諸要因がある上に、貿易に伴うさまざまな参入障壁や克服すべき課題がある。特に参入障壁としては、植物検疫、農薬、添加物、食品衛生などへの適切な対応や、表示ラベルの規制など、輸出相手国の規則に沿うことが求められる。また市場の開拓や現地の流通チャネルへのアクセス、生鮮品の管理の難しさなどの課題も少なくない。農作物輸出に関わる課題をまとめると、以下のような点が挙げられる。● 鮮度の維持通常の国内での流通チャネルと比較すると、明らかに産地から市場までの距離と時間が延びる上に、税関や植物検疫などを含めて航空便や船便の積み地で要する検査、搬入(カットオフ)から積み込み、輸送中および到着地での同様のプロセスから、さらに時間を要する。貨物のトランシップ(積み替え)の発生や船舶の遅延、震動などにより荷傷みも発生しやすく、また輸送サービスの頻度によっては、積み地や揚げ地での蔵置が発生する。港湾によっては、貨物の揚げ積み量に従って、定期船サービスが寄港を取りやめる抜港のケースもあり、直行便の有無は生鮮品については鮮度に大きく影響する可能性が高い。● 収量・収穫の不安定性輸出される品目の中でも、当初から輸出を意図して産地で生産される農作物は限られており、気象などの自然環境の影響を受けることで、収穫によっては必要量の確保に問題が生じる場合がある。さらに、バイヤーとの契約に基づいて、商品が市場から調達される場合にも、収量や収穫の不安定性の影響を受けやすい。● 輸送方法(コールド・チェーンなど)の難しさ特に温度管理を必要とする生鮮品であれば、出荷地から現地の店頭に至るまでのサプライチェーン全体において、商品を低温や冷蔵状態などに維持する必要がある。一方で、積み替え地において、温度管理と衛生管理の徹底した荷捌き施設の確保の難しさがあり、また産地および市場において、保冷車や保冷倉庫などのコールド・チェーンが完備されていない場所もある。さらに航空輸送に関しては、通常は旅客機の胴体部の貨物スペースが利用されるが、昨今の近距離国際線サービスの使用機の小型化傾向もあり、輸送量とスペースの確保が容易ではない。

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る