多国籍企業研究14・15合併号
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(出典:両社のホームページ等より抽出)九州農産物通商株式会社九州農水産物直販株式会社3. 2 九州からの農作物輸出の取り組みの事例(あまおう)表4 九州の農作物輸出を目的とした代表的な企業2008年12月「福岡農産物通商株式会社」として会社設立2009年1月香港向けにあまおうを初輸出2009年7月第三者割当による増資(現在の資本金は9,205万円)2016年4月「九州農産物通商株式会社」へ社名変更株主:JA福岡中央会、福岡県、福岡県内21のJAなど2015年8月九州経済連合会などの主導により、資本金1,890万円で、「九州農水産物直販株式会社」を設立2015年11月香港へ青果物を輸出2017年6月香港へ鶏卵を輸出2017年10月シンガポールへ青果物を輸出2018年6月台湾への青果物を輸出2018年9月中国山東省へ水産物(養殖ぶり)輸出株主:JA宮崎経済連、(株)麻生、九州旅客鉄道(株)など8を重ねながら、輸出に向けたブランドのポジショニングを明確にして、サプライチェーンの構築と販売先の開拓に注力し、それぞれの障壁に対応してきたことが指摘できる。九州農水産物直販株式会社では、中間マージンを大幅に削減するべく、「産地直送&店舗直送」のビジネスモデルを構築している。産地で買い付けたいちご、キノコ類、甘薯や葉物野菜などの生鮮農作物と、鶏卵や冷凍水産品などの加工品を中心に、アジアに向けて出荷している。現在、輸出先の売上構成において香港の占める割合は、98.9%と圧倒的に高く、その理由は香港に本社を置くコングロマリットであるジャーディン・マセソン・ホールディングス(Jardine Matheson Holdings)の傘下で、香港、台湾、シンガポール等アジアの11カ国と地域で約1千を超える店舗を展開する流通企業のDairy Farm(牛奶國際控股有限公司)に直接納入していることにある。その代表的な例が、福岡県内の農家から仕入れたあまおうの香港を中心としたDairy Farm約300店舗での販売である。このようなグローバルな規模の販売者との密接な関係に基づく契約によって、良質な生産物を出荷することで、アジア各地での販売展開が可能になった。一方で、コストと手間を掛けて海外に輸出される商品は、期待されるほどの高価格では現地で販売されてはいないという現実もある。九州経済産業局が2018年1月に香港と福岡市内で実施した福岡県産あまおうの店頭価格調査を見ると、1パックあたりでそれぞれ以下のような価格で販売されていたことがわかる。

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