多国籍企業研究14・15合併号
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8 人口1,300万人 全国の10.1%(2019)、総面積4.4万平方、キロ11.2%(2019)、域内総生産(名目)45.9兆9 九州農政局「九州の主な農林水産物と食品の輸出品目と輸出先」 2021年10月円8.3%(2016)73.九州の農作物輸出の概況と輸出の取り組み3. 1 九州からの農作物輸出九州は、人口、総面積、域内総生産などが全国に占める割合8から、しばしば日本の1割経済と言われる。一方で農林水産物の生産高においては、農業産出額が19.6%、漁業産出額24.2%、林業産出額20.8%と、2019年の時点で全国の約2割を占めている。九州農政局の調査によると、肉用牛の生産は全国の42.1%、以下豚29.8%、ブロイラー47.6%、いちご34.9%、みかん33.3%、茶42.3%など、全国でも極めて高い水準にある。また、産地としての九州各地からアジアの主要都市への近接性と各都市を結ぶ多様な海上輸送ルートから、農林水産物の輸出が近年積極的に進められている9。2019年度の九州各県からの主な農産物輸出の例として、福岡県からはいちごのあまおうは香港、シンガポールへ、大分県産の日田の梨は台湾、香港、ベトナムへ、佐賀県の露地みかんはカナダ、香港、シンガポールへ、鹿児島県産のさつまいもは香港、シンガポールなどに輸出されている。これらに代表される特色ある生産物を中心に、2019年には九州各県からの農産物の輸出が440億円に達した。その前年にあたる2018年度の農林水産省の生産農業所得統計によれば、畜産、酪農を含めた九州の農業産出額は、合計で1兆7,856億円であり、その中で農産物に限定した産出額は7,896億円になる。農産物の産出額全体からすれば、まだ輸出額の占める割合は低いものの、少しずつその割合は増加している。九州では農協や生産者が個別に海外輸出に取り組む一方で、組織の連携によって農作物輸出を目的として設立された企業が2社ある。まず、2008年に福岡県、JA福岡中央会、福岡県内にある複数のJAによって設立された九州農産物通商株式会社であり、次に2015年に九州経済連合会の全面的なバックアップを受けて、JA宮崎経済連、(株)麻生、九州旅客鉄道(株)などを株主として設立された九州農水産物直販株式会社があり、アジア市場に向けた組織的なアプローチを行っている。特に両社が早い時期から積極的に推進しているのが、福岡の特産品であるいちごのあまおうの輸出である。あまおうは、国内で最大の生産量の「とちおとめ」、2005年のあまおうに先行して登録された「さちのか」、「さがほのか」に比べても、大粒で丸みのあることの見た目の良さや味のバランスから、アジア地域でも需要が伸びている。そのような中で、あまおうは、他のいちごのブランドとの比較において、より地域で集中して輸出の取り組みが行われていると言える。その理由として、福岡県農業総合試験場で育成され、県内でのみ栽培が許可されていることから、県内の生産者と組織が密接に共同しながら、輸出促進に関わっている。両社は会社設立後の初期段階から、あまおうの輸出に着手しており、県内の関係者との間で協議

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