多国籍企業研究13号
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4日本の大学で学ぶ外国人留学生の「就職問題」に関する研究      ― 大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて ― 古沢 昌之次に、専攻分野は「人文科学」が46.9%を占めて第1位で、「社会科学」が第2位(24.8%)、「工学」(11.9%)が第3位である。これら上位3項目で全体の83.6%に達する。以下「その他」(5.8%)、「芸術」(3.4%)、「保健」(1.7%)、「理学」「農学」(ともに1.3%)、「教育」(1.2%)である。日本語教育機関を除く「高等教育機関」の留学生(208,901人5)に絞って見ると、「社会科学」が35.4%でトップとなり、「人文科学」の構成比は24.0%に低下する。これは、日本語教育機関で学ぶ留学生の専攻は全て「人文科学」と見なされるためである(日本学生支援機構,2019a)。他方、出身国・地域は「中国」が114,950人(構成比38.4%)で第1位となり、第2位は「ベトナム」(72,354人、24.2%)、第3位は「ネパール」(24,331人、8.1%)で、以下「韓国」(17,012人、5.7%)、「台湾」(9,524人、3.2%)の順であった。中国とベトナムで全体の62.6%を占め、上位5ヶ国・地域のシェアは79.6%に達している。「高等教育機関」の留学生(208,901人)に絞って見ても、上位5ヶ国・地域の順位は変わらない。但し、2008年と比較すると、日本語教育機関も含めた全体における構成比は、中国(58.8%→38.4%)、韓国(15.2%→5.7%)、台湾(4.1%→3.2%)が下落する一方、いわゆる非漢字圏であるベトナム(2.3%→24.2%)とネパール(1.2%→8.1%)が急伸していることが分かる(日本学生支援機構,2019a)。非漢字圏からの留学生増加の一因としては、「英語による授業」のみで卒業・修了できる学部・大学院が増加していることが考えられよう(佐藤,2019)6。他方、留学生が学んでいる地域は、「関東」(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川)が過半数(56.1%)に達し、第2位の「近畿」(三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山:17.7%)を大きく引き離している。第3位は「九州」(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄:10.4%)で、以下「中部」(新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知:8.0%)、「中国」(鳥取、島根、岡山、広島、山口:3.8%)、「東北」(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島:2.1%)、「北海道」(1.3%)、「四国」(徳島、香川、愛媛、高知:0.6%)である。これを都道府県別に細分化すると、東京、大阪、福岡、京都、千葉、埼玉、兵庫、愛知、神奈川、群馬の順となり、ベスト10のうち関東から5つ、近畿から3つがランクインしている。高等教育機関についても、状況は変わらず、関東が過半数(51.3%)で、近畿(18.5%)が続き、以下「九州」(11.4%)、「中部」(8.7%)、「中国」(5.0%)、「東北」(2.5%)、「北海道」(1.7%)、「四国」(0.9%)であった(日本学生支援機構, 2019a)。5 この数値には、必ずしもわが国での学位取得を目的とせず、大学等における学習・異文化体験・語学の実地習得などを目的として、概ね1学年以内の教育を受けて単位を修得または研究指導を受ける「短期留学生」として18,673人が含まれている(日本学生支援機構,2019a)。6 文部科学省高等教育局(2019)によれば、「英語による授業」のみで卒業できる学科等がある大学の比率は、2012年度の2.7%から2016年度には5.2%へと上昇している。また、これを大学院レベルで見ると、2016年度の比率は16.2%に及ぶ。なお、佐藤(2016)では、ベトナムとネパールからの留学生が増加している背景に関して、送出側・受入側各々の要因が論じられている。

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