24日本の大学で学ぶ外国人留学生の「就職問題」に関する研究 ― 大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて ― 古沢 昌之(2)今後の研究課題最後に我々のこれからの研究課題について述べる。今回の調査結果は、大学のキャリアセンターの見解に基づくものであるゆえ、今後は企業や留学生本人への調査を実施し、研究のトライアンギュレーション(triangulation)を図る必要があると考える。例えば、本調査では日本企業が留学生に「日本人性」を重視している様子が明らかになったが、別言すれば、これは「プラスアルファとしての多様性重視」とも言うべきものである。すなわち、現状、企業が留学生に求めているのは、日本人と同じことができた上で、外国人としての特性を発揮してもらうことであるように思える。今後の研究では、こうした企業行動の背景にあるものは何か、グローバル化が進展する中でそうした状況に変化の兆候が見られるのか、といった点に関して考察していくことが肝要であると言えよう。また、留学生本人については、上で述べたように、学内の就職支援行事への参加状況が芳しくないことが示されたが、その背後にある諸事情を掘り下げて論じる必要があると考える。留学生という属性は、本質的にトランスナショナルな性質を帯びているということもあり、大学卒業後・大学院修了後の進路は日本での就職のほか、進学・帰国など日本人学生と比べて選択の幅が広いことも事実である。その一方で、かような状況は、多様な選択肢の間での迷いや揺らぎをもたらし、それが日本での就職活動に注力できない一因になっている可能性もあろう。従って、留学生本人への調査においては、彼(彼女)らのキャリア志向と絡めたアプローチも重要になってくると思料する次第である。主要参考文献アジア太平洋研究所編(2015)『高度外国人材受入促進のための実践的研究プロジェクト報告書―関西における高度外国人材活用:外国人留学生の就職活動実態調査とグローバル人材の育成に関する基礎的調査―』。池田佳子(2019)「外国人留学生のキャリア支援・就職支援のための日本語教育―座学も実践も取り込む『総合的教育プログラム設計』―」『留学交流』(2019年8月号)、1-12頁。稲井富赴代(2012)「中国人留学生に対するキャリア教育と就職支援―日本企業に就職した元留学生に対するアンケート調査をもとに―」『高松大学・高松短期大学研究紀要』(第56・57号)、1-37頁。(付表1)相関行列123456781.設置形態 (私立=0、国公立=1)―2.設立からの年数-0.085―3.学生数-0.071 0.461***―4.留学生比率-0.171*-0.221**-0.175**―5.日本人学生の就職率-0.005-0.020 0.122-0.121―6.留学生の就職率 0.086-0.059 0.055-0.047 0.445***―7.留学生の就職支援担当 (なし=0、あり=1)-0.341*** 0.133 0.294*** 0.220**-0.085-0.092―8.偏差値 0.505*** 0.344*** 0.484***-0.296*** 0.080-0.018-0.023―(注)***:p<0.001,**:p<0.01,*:p<0.05。
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