多国籍企業研究13号
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23日本の大学で学ぶ外国人留学生の「就職問題」に関する研究      ― 大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて ― 古沢 昌之も良好であることを指摘するものであるが、留学生限定の支援施策の有効性が指し示された点も注目に値しよう。先の記述統計で見たように、留学生限定の施策については、全体的に実施率が非常に低いことが分かった。しかし逆に言えば、この事実は留学生の就職率アップに向けた支援策に関して改革の余地があることを示唆していると思われる。一方で、「支援担当者」の配置が就職率と有意な関係でなかったという調査結果は、就職支援に向けた職員・教員の配置及び業務のあり方の再検討を迫るものであるのかもしれない。第2のインプリケーションは「就職活動に成功する外国人留学生の特性」に関わるものである。我々が成功要因として抽出した各因子を構成する項目の平均値は『日本語能力』のそれが最も高く、『日本的な態度・行動・コミュニケーションスタイルの体得と日本文化への適応』が続いた。これは、先行研究の知見及び我々のアンケートで企業の求人・選考方法に関する問題点として「留学生のSPIの成績や日本語能力を日本人学生と同じ基準で評価しようとする」が1位(同率)に挙げられた点と整合的であり、外国人留学生の就職成功には「日本人性」(日本語能力、日本的な態度・行動やコミュニケーションスタイル)が重要である旨を物語っていると言える。こうした中、今回の調査で外国人留学生の就職支援策として「ビジネス日本語講座」や「日本企業の経営に関するレクチャー」のスコアが全学・留学生限定のいずれにおいても低水準に留まったことを踏まえると、今後各大学には留学生の日本語能力向上や日本文化(企業文化も含む)の理解に向けた教育に注力することが求められると言えよう24。第3のインプリケーションは、「留学生本人」の問題点である。これまでの関連研究においては、留学生の低い就職率の原因を企業の求人・選考方法や大学の支援体制(全学的に戦略的に取り組んでいる大学が少数であること)等と関連付けて論じるケースが主流であった(久保田,2019)。これに対し、我々の調査では、「日本の就職活動の仕組みを理解せず、流れに乗り遅れ、エントリー数が少なく、就職支援に向けた学内の諸行事にも参加しない留学生」が多い様子が浮かび上がってきた25。各大学において留学生限定の施策があまり実施されていない背景には、こうした留学生側の行動様式も関係しているのではなかろうか。一方で、本アンケートでは大学側の問題点として「留学生の求職ニーズの把握」が上位に挙げられたが、これは留学生の就活関連行事への参加が少ないため、キャリアセンターと留学生の接点やコミュニケーションの機会が限定的であることの裏返しなのかもしれない。そして、こうした状況はキャリアセンターから留学生の足がさらに遠のくという悪循環をもたらす危険性を内包していると思われる。24 この点に関し、先進的な事例として、文部科学省の委託事業(留学生就職促進プログラム)であるSUCCESS-Osakaを紹介する。SUCCESS-Osakaは、関西大学・大阪大学・大阪府立大学・大阪市立大学が中心となり、産官学連携のもと留学生の就職促進及び定着化に向けた取り組みを行うコンソーシアムで、日本語能力関連では、座学と実技・実践の両面から留学生の能力アップに注力し、BJT日本語能力テストのJ1、J1+取得等をサポートしている(池田,2019及び我々のSUCCESS-Osakaへのヒアリング調査(2019年9月18日)による)。25 就活の開始時期が遅いことやエントリー数が少ないことについては、アジア太平洋研究所(2015)も参照されたい。

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