22日本の大学で学ぶ外国人留学生の「就職問題」に関する研究 ― 大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて ― 古沢 昌之(7)「政府・自治体・公的機関」への「要望」各大学に対し、政府・自治体・公的機関への要望事項を尋ねた。ここでは4項目を提示し、これまで同様の5点法による回答を求めたところ、全ての平均値が3.50を超えた(表15)。最高は「留学生対象のインターンシップや企業見学会など留学生と企業の出会いの場を増やしてほしい」(3.87)で、「(2019年5月に接客業などにも拡大されたが)留学生が就職可能な職種をさらに拡大してほしい」(3.74)が続いた。第3位は「自治体単位だけでなく、広域的に(例えばオール関西として)連携して留学生のための就職セミナー・合同企業説明会を開催してほしい」(3.64)、第4位は「高度人材ポイント制の要件緩和や優遇措置の拡充を進めてほしい」(3.52)であった。これらの結果は、外国人留学生の就職問題が、学生・大学・企業という3つのアクターに変革や自助努力を求めるだけでなく、政府・自治体や公的機関との連携・協力のもと取り組むべき社会的課題であることを指し示していると言えよう23。なお、国公立と私立の間には「就職可能な職種の拡大」と「高度人材ポイント制の要件緩和と優遇措置の拡充」に各々1%水準・5%水準の有意差(t検定)が確認され、ともに私立のスコアが国公立を上回った。(表15)「政府・自治体・公的機関」への「要望」項 目全体SD国公立私立t値① (2019年5月に接客業などにも拡大されたが、)留学生が「就職可能な職種」をさらに拡大してほしい3.740.8503.463.85-2.744**② 「高度人材ポイント制」の「要件緩和」や「優遇措置の拡充」を進めてほしい3.520.7733.333.60-2.239*③ 自治体単位だけでなく、「広域的」に(例えばオール関西として)連携して留学生のための就職セミナー・合同企業説明会を開催してほしい3.640.7273.543.68-1.041④ 留学生対象のインターンシップや企業見学会など、留学生と企業の「出会いの場」を増やしてほしい3.870.7663.763.91-1.089(注)**:p<0.01,*:p<0.05。4.調査結果からのインプリケーションと今後の研究課題(1)調査結果からのインプリケーション第1のインプリケーションは、「外国人留学生の就職支援に向けた体制・施策」に関する事柄である。我々が実施した重回帰分析では、留学生の就職率には「日本人学生の就職率」と「留学生限定の就職支援施策」が有意なプラスの影響力を有することが明らかとなった。この結果は、一面では日本人の就職率と留学生のそれが相関しており、日本人の就職率が高い大学は留学生の就職状況23 この点については、これまでにも「アジア人財資金支援構想事業」(2007~2011年度)、「外国人材活躍推進プログラム」(2015年度~)、「留学生就職促進プログラム」(2017年度~)など産官学連携による取り組みが実施されてきたが、対象となる大学や留学生が限定されているのも事実である。
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