多国籍企業研究13号
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21日本の大学で学ぶ外国人留学生の「就職問題」に関する研究      ― 大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて ― 古沢 昌之理局との連携や情報共有が不十分である」(3.16)、「キャリアセンターと留学生の指導教員(ゼミ担当教員)との連携や情報共有が不十分である」(3.06)、「留学生の就職活動をサポートするための予算が不足している」(3.02)の順となった。他の項目は平均値が3.00未満であった。国公立と私立を比べると、「キャリアセンターと地域の自治体や経済団体との連携や情報共有が不十分」を除く11項目で国公立のスコアが私立を上回り、t検定では「予算不足」に5%水準の有意差が認められた。③ 企業に関わる事項ここでは、外国人留学生の低い就職率や入社後の低い定着率の原因について、日本企業の「求人・選考方法」の側面から探った。分析の結果、全体の平均値は「求人票に過去の留学生採用実績や外国人社員数を明記していない(留学生には、どの企業が留学生の採用意欲が高いのか分からない)」と「留学生のSPIの成績や日本語能力を日本人学生と同じ基準で評価しようとする(留学生に不利)」が同スコア(3.69)で第1位となった(表14)。第3位は「求人票に留学生に求める能力要件・人材像や具体的な職務内容を明記していない(適任の留学生が応募せず、ミスマッチが発生する)」(3.58)、第4位は「留学生への求人(留学生対象や留学生歓迎・留学生可の求人)が少ない」(3.57)、第5位は「留学生対象や留学生歓迎・留学生可であっても、求人票を日本語のみで発行している」(3.46)であった。今回の調査では、求人票を巡る諸問題のスコアが比較的高かったことから、留学生と企業のミスマッチを解消するには「求人票」が1つのキーとなるように思われる。例えば、フォーマットを改訂して記載内容の充実を図ることや多言語化が検討されてしかるべきであろう。なお、国公立―私立間では、t検定で「留学生への求人が少ない」にのみ有意差(5%水準)が現れ、私立の数値の方が高かった。(表14)外国人留学生の就職を巡る「問題点」③(企業に関わる事項)項   目全体SD国公立私立t値① 留学生への「求人」(留学生対象や留学生歓迎・留学生可の求人)が少ない3.570.9253.283.69-2.570*② 留学生対象や留学生歓迎・留学生可であっても、求人票を「日本語のみ」で発行している日本企業が多い3.460.9663.543.43 0.667③ 求人票に留学生に求める「能力要件・人材像」や「具体的な職務内容」を明記していない日本企業が多い(適任の留学生が応募せず、ミスマッチが発生する)3.580.8193.523.60-0.547④ 求人票に「過去の留学生採用実績数や外国人社員数」を明記していない日本企業が多い(留学生には、どの企業が留学生採用意欲が高いのか分からない)3.690.7683.603.72-1.531⑤ 留学生の「SPIの成績や日本語能力」を「日本人学生と同じ基準で評価」しようとする日本企業が多い(留学生に不利)3.690.8603.543.75 0.705⑥ 採用選考において、留学生がPRしたい「専門知識やスキル」よりも、社会人としての「素養やポテンシャル」を重視する日本企業が多い3.390.7093.463.37 0.737⑦ 留学生に対し、「転職志向が強く、定着率が悪い」というイメージを持っている日本企業が多い3.140.5693.153.14 0.131⑧ 留学生を欲する企業は「中小企業」に多く、「大企業志向」の留学生とギャップがある3.330.7733.353.32 0.193(注)*:p<0.05。

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