多国籍企業研究13号
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19日本の大学で学ぶ外国人留学生の「就職問題」に関する研究      ― 大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて ― 古沢 昌之(6)外国人留学生の就職を巡る「問題点」ここでは、日本人学生と比べて外国人留学生の就職率が低く、就職後の定着率も良くないとされる中、留学生の就職に関わる問題点について、「留学生本人」「大学」「企業」の3つの側面から探った。具体的には、先行研究の知見と我々がヒアリング調査で得た情報をもとに、留学生本人を巡っては11項目、大学に関しては12項目、企業については8項目を提示し、それら各々に対して5点法(5=全くそのとおり、4=どちらかと言えばそのとおり、3=どちらとも言えない、2=どちらかと言えば違う、1=全く違う)で評価していただいた。① 留学生本人に関わる事項まず「留学生本人」に関する問題として、最も平均値が高かったのは「就職活動のスタート時期が遅い」でスコアが3.77に達した(表12)。第2位は「日本の就職活動の仕組み・流れを理解していない」(3.73)、第3位は「大学が主催する就職ガイダンス、SPI・エントリーシート・面接・グループディスカッションなどの対策講座、学内企業説明会(留学生限定も含む)に参加しない」(3.66)となり、以下「エントリーする企業数が少ない」(3.52)、「日本で就職できなければ大学院進学か帰国といった安易な考えで就職活動に臨んでいる」(3.38)が続いた22。また、国公立と私立を比較すると、「就職活動に必要な資金(企業訪問に必要な交通費など)が不足している」以外の全項目で私立のスコアが高くなり、そのうち「大学からの個別の呼び出しや問い合わせに応じない」に0.1%水準、「日本で就職できなければ大学院進学か帰国という安易な考え」「エントリーする企業数が少ない」に1%水準、「服装や髪型など就職活動にふさわしくない身だしなみ」「アルバイトに精を出しすぎている」に5%水準の有意差(t検定)が検出された。留学生に関わるこれらの問題については、私立の担当者の方が相対的に深刻に感じているようである。② 大学に関わる事項大学に関わる問題については、平均値が3.50を超える項目はなく、「留学生の就職活動をサポートするためのマンパワーが不足している」(3.49)が最高であった(表13)。第2位は「留学生の求職ニーズと企業の求人ニーズをマッチングさせる機能が弱い」(3.40)、第3位は「個々の留学生の求職ニーズやキャリア志向を把握できていない」(3.35)で、以下「個別企業の留学生への求人ニーズ(どの企業がどんな留学生を求めているのか)を把握できていない」(3.33)、「キャリアセンターと入国管22 全体で3位となった「大学の就職ガイダンスやSPI対策講座などへ参加しない」については、近畿大学経営学部・古沢研究室が2019年10月に同大学で学ぶ中国人留学生(学部・大学院の正規学生)に対して実施したアンケート調査(n=73人)の結果が参考となろう。同調査で大学のキャリアセンターの諸行事に積極的に参加しているかを尋ねたところ、5点法による回答の平均値(尺度は本論文調査と同様)は、「就職ガイダンス」(2.95)、「学内企業説明会」(2.75)、「インターンシップ」(2.48)、「面接、グループワーク、SPIなどの対策講座」(2.74)となり、提示した全項目が3.00未満だった。また、就職活動に関して重視する情報源としては「中国人同士のネットワーク」が3.93に達する一方、「大学のキャリアセンター」は3.33に留まった。

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