16日本の大学で学ぶ外国人留学生の「就職問題」に関する研究 ― 大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて ― 古沢 昌之成果を踏まえて26項目の特性を提示し、その各々が「(自校の)就職活動に成功する留学生」にどの程度該当するかを5点法で回答していただいた(5=全くそのとおり、4=どちらかと言えばそのとおり、3=どちらとも言えない、2=どちらかと言えば違う、1=全く違う)。回答の平均値は「日本語を話す能力が高い」(4.34)、「日本語を読む能力が高い」「日本語を書く能力が高い」(ともに4.15)の順となり、日本語能力が上位3項目を占めた(表9)。第4位は「日本の文化を理解し、適応しようとしている」(3.99)、第5位は「協調性やチームワークに秀でている」(3.94)で、以下「ルール・時間の厳守や礼儀作法に秀でている」(3.93)、「履歴書・エントリーシートが内容面でしっかり書けている」(3.90)、「業界研究・企業研究がしっかりできている」(3.86)、「自己分析がしっかりできている」(3.83)、「多くの日本人学生と交流している」(3.80)となった。国公立と私立の比較では、「協調性やチームワーク」「学業成績」「指導教員へのほう・れん・そう」で5%水準の有意差(t検定)が認められ、いずれも私立のスコアの方が高かった。次に、成功する留学生の姿をより明確にするため、前掲の26項目を因子分析にかけて、整理・集約する作業を行った(最尤法、プロマックス回転)。分析の結果、4つの因子(固有値=1以上)が抽出された(表10)。第1因子は「学外の就職情報サイトの有効活用」「学外の就職セミナー・企業説明会への積極的参加」「学外の就職支援会社の有効活用」「ハローワーク・外国人雇用サービスセンターの有効活用」「大学のインターンシップへの積極的参加」「大学が主催する就職ガイダンス、SPI・エントリーシート・グループディスカッション対策講座、学内企業説明会への積極的参加」「OB・OGの積極的訪問」「キャリアセンターの積極的訪問」で構成されていることから、『学内外の関係機関の有効活用と積極的な就職活動』(α=0.885)と命名した。第2因子は「協調性・チームワーク」「多くの日本人学生と交流」「日本の文化への適応」「ルール・時間の厳守や礼儀作法」「あうんの呼吸や空気を読むといった日本的コミュニケーション」から成っているので、『日本的な態度・行動・コミュニケーションスタイルの体得と日本文化への適応』(α=0.879)と名付けた。そして、第3因子は日本語を「書く」「読む」「話す」能力ゆえ『日本語能力』(α=0.954)とした。最後に、第4因子は「業界研究・企業研究」「自己分析」「履歴書・エントリーシートの内容」の3項目であるため『業界研究と的確な自己分析・自己PR』(α=0.901)という名称にした。続いて、上記の各因子を構成する項目の平均値を算出したところ、全体では『日本語能力』が4.21で最高となり、『日本的な態度・行動・コミュニケーションスタイルの体得と日本文化への適応』(3.90)が第2位、『業界研究と的確な自己分析・自己PR』(3.86)が第3位であった(表11)。最も平均値が低かったのは『学内外の関係機関の有効活用と積極的な就職活動』で3.35だった。これら平均値を分散分析にかけた結果、0.1%水準の有意差が認められ(F値=90.491)、多重比較(ペアごとの比較)では「日本的な態度・行動・コミュニケーションスタイルの体得と日本文化への適応―業界研究と的確な自己分析・自己PR」を除く全てのペアの間にいずれも0.1%水準で有意差が検出された。また、国公立と私立を比べると、t検定で『日本的な態度・行動・コミュニケーションスタイルの体得と日本文化への適応』に5%水準の有意差が認められ、後者が前者を上回った。
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