多国籍企業研究13号
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11日本の大学で学ぶ外国人留学生の「就職問題」に関する研究      ― 大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて ― 古沢 昌之業が求めるスキルは「日本語能力」が圧倒的で、日本語能力検定1級・2級(N1・N2)など具体的基準を示すケースが多かった。「日本企業の海外子会社」「外国企業の在日子会社(支店)」からの求人についても、状況は同様のようである。前者の平均値は2.55に留まり、「どちらとも言えない」が63.0%を占めた。肯定的回答は「どちらかと言えばそのとおり」が3.7%あるのみであった。特に増えている海外子会社(支店)の所在国として、3校が「中国」、2校が「ベトナム」を挙げた(複数回答可)。後者も平均値は2.53で、「どちらとも言えない」が7割近く(66.7%)に及び、肯定的回答は「どちらかと言えばそのとおり」が1校(0.6%)あるにすぎなかった(特に増えている在日子会社(支店)の本社所在国は「ベトナム」と回答)。経済・経営活動のグローバル化が進展していると言われるが、在外日系進出企業や在日外資系企業からの求人は未だ活発でないようである。なお、上記の5項目を巡っては、国公立大学と私立大学の間に有意な差は認められなかった。(表4)外国人留学生への「求人」を巡る状況項   目全体SD国公立私立t値①留学生への求人は「全体として」増えている3.470.6963.503.460.350②「出身国を特定した求人」が増えている2.830.7522.692.89-1.513③ 「スキル(語学力など)を特定した求人」が増えている3.010.7562.843.08-1.765④ 「日本企業の海外子会社(支店を含む)からの求人」が増えている2.550.7962.442.59-1.040⑤ 「外国企業の在日子会社からの求人」が増えている2.530.7492.422.57-1.146(注) 5点法による回答(5=全くそのとおり、4=どちらかと言えばそのとおり、3=どちらとも言えない、2=どちらかと言えば違う、1=全く違う)の平均値。(4)外国人留学生への「就職支援体制・施策」① 「支援担当職員・教員」の配置「外国人留学生の就職支援担当者」の有無について尋ねた。その結果、「他の主要業務と兼務する職員を配置」が49.4%でトップとなり、「特に配置していない」(40.4%)が続いた(複数回答可:表5)。「他の主要業務と兼務する教員を配置」「留学生の就職支援を主たる業務とする職員を配置」は各々12.0%・9.6%に留まった。また、「留学生の就職支援を主たる業務とする教員を配置している」と回答した大学は1.2%にすぎなかった。なお、国公立と私立を比べると、前者では「配置せず」が67.4%に達し、後者より37ポイント以上高かった。

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