多国籍企業研究13号
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7日本の大学で学ぶ外国人留学生の「就職問題」に関する研究      ― 大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて ― 古沢 昌之サーチ(2018a)が2019年3月卒業予定の外国人留学生(大学4年生及び大学院修士課程2年生)を対象に実施した調査では、2018年7月時点の内定率は42.6%に留まり、日本人学生(81.1%)を大きく下回る様子が示されている。また、金子(2019)や久保田(2019)のように、先に見た日本学生支援機構の2つの調査結果を重ね合わせ、日本での就職希望者が約65%に達するにも関わらず、日本で実際に就職したのは留学生(高等教育機関)の約32%に留まることから、約半数が希望を成就できていない旨を述べた論考も見られる。日本学生支援機構(2019b)の進路希望調査は複数回答可であることなど留意すべき点もあるが、先行研究の議論を総括すると、外国人留学生の日本での就職を巡る状況が厳しいものであることは事実のように思われる(守屋,2011;稲井,2012;労働政策研究・研修機構,2013;篠崎,2015;鄭,2015;田村・石井・オスティン,2019など)。② 就職後の低い「定着率」労働政策研究・研修機構(2008)によると、企業が留学生に対して抱く主なイメージとして、「自己主張が強い」(42.6%)、「日本語能力が不足している」(38.4%)に次いで、「定着率が低い」(34.4%)が第3位となっている(複数回答可)。また、新日本有限責任監査法人(2015)が留学生を新卒採用している日本企業(222社)に対して実施したアンケート調査では、元留学生の定着状況について「かなり問題である」「やや問題である」の合計が30.1%に及ぶ。同様に、ディスコ キャリタスリサーチ(2018b)による日本の主要企業への調査では、外国人社員活用の課題として、24.2%が「離職率が高く定着しない」を挙げている。そして、離職理由は「母国への帰国」(47.9%)が最多で、以下「キャリアアップのため」(36.6%)、「仕事への適性の問題」(23.0%)、「日本の企業文化が合わなかった」(16.4%)、「職場での人間関係の問題」(14.5%)が続く(いずれも複数回答可)12。さらに、志甫(2009)によれば、過去に留学生を採用した経験がある企業の中には「定着率の低さ」への懸念から今では採用に極めて慎重になっているところもあるという。また、留学生に関心はあるが採用に踏み切れない企業からも「定着率の低さ」がその理由の1つとして指摘されたとのことである。③ 留学生と企業の「意識のギャップ」横須賀(2007)が外国人留学生と日本企業の双方に対して実施した調査によると、留学生は企業が期待するよりも「日本人と異なるメンタリティー」や「日本人にない発想」などを重視してほしいと望んでいるが、企業は日本語能力に優れ、日本人と協調できる「日本人性」(古沢,2020)の高い留学生を求めているという13。事実、労働政策研究・研修機構(2009)の調査では、留学生に12 元留学生の定着率の低さの背景には、後述する彼(彼女)らの短期志向のキャリアビジョンも関係しているものと思われる。13 同様に、守屋(2011・2012)では、日本企業が「日本人化」した留学生を採用する傾向にあることが述べられている。

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