多国籍企業研究第11号
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40ラグジュアリー消費における知覚価値と倹約志向の相互作用      ― ラグジュアリー・ブランド品を所有する日本人を対象に ― 李  炅泰げる事例もあらわれている6。このように、ファッションLBを手がける多くの企業が同現象への巧みな対応を模索する中、本研究の分析結果は日本人消費者との関係性を強化するために、倹約志向性が考慮に値する要素であることを示唆している。倹約水準はファッションLBに関わる複数価値次元の効果を調整する役割を果たした。それを踏まえれば、ファッションLBのマーケターはターゲット層の倹約志向を把握して価値提案を行うことが、満足度と再購買可能性を高めるのに役立つと考えられる。例えば、標的顧客に関するデータベースを構築し、ダイレクト・メールやソーシャル・メディアを通じて価値提案や再購買の説得を行うケースがあり得る。そのような場合、節約意識の高い消費者に対しては、職人の熟練技・精巧さ・素晴らしいサービス内容のような品質面の優越性に力点を置いて価値提案を工夫することで、より高い効果が期待できると考えられる。課題と展望:本研究にはいくつか限界と発展可能性がある。第1に、すべての倹約消費者を網羅したわけではない。本稿ではLB品所有者をスクリーニングし、その中で倹約高低を分類した。これはLB品所有者の中にも倹約消費者が多いことの証明にはなるが、そもそも高価なブランド品を買わない倹約家の存在を否定するものではない。つまり、倹約消費者の中には、必要以上の贅沢品を購入対象として考えないセグメントが存在し得るのである。本稿ではLB消費と倹約の相互作用に着眼したため、LB消費に関わっていない人は対象外にした。同じく、これから高級ブランド品を買う可能性のある人たちも対象外にしている。今後は、初めてLBアイテムを購入する文脈にも検証の範囲を広げる方が望ましい。また、高頻度の購買者に絞った検討も加えるなど、多様な市場セグメントに通用するモデルの構築を目指すべきである。第2に、本稿では高級ファッションを対象にしたが、今後は次の2つの方向でさらに検討が求められる。1つは、自動車やサービスなど他のLBカテゴリーへの外延的な拡張分析である。2つは、ファッションLB内の小カテゴリー(洋服やバックなど)に対する個別分析である。この内外的な分析の拡張を通じて、知見の一般化可能性が高まると思われる。第3に、ラグジュアリーに対する知覚と反応については、文化間相違が指摘されている。とりわけ、個人主義傾向の欧米圏と集団主義傾向の東アジア圏とでは、LBに関する価値意識が異なることが知られている(e.g., Christodoulides et al., 2009; Le Monkhouse et al., 2012; Wong & Ahuvia, 1998)。ただし、同じ東アジア圏であっても、経済発展段階もさることながら、ライフスタイル・価値観・節約意識の様態も一様ではない。その上、今や世界の個人向け高級品購入の32%を中国人が占める(D’ Arpizio et al., 2017)など、グローバル・ラグジュアリー市場における6 例えば、バーバリーは2009年に「Art of the Trench」キャンペーンを展開し、それまでセレブのアイコンであったハイエンドのトレンチコートをマス市場に導入した。バーバリーは消費者にトレンチコート姿の写真を自社のマイクロサイトやFacebookページにアップロードするよう呼びかけ、投稿されたUGC(user-generated content)を活用することで大きな反響を得た。ユーザーはそれらの写真をタイプ・色・性別・人気度などでソートして閲覧できるだけでなく、コメントを付けたりシェアすることもできた。結果的に、Facebookフォロワー数が2009年だけで100万人を超え、Eコマースでの販売量も対前年比50%増えるなど、SNSとUGCによるファン層の構築、ならびに関係性マネジメントで大きな成果を上げた。出展はAhrendts (2013)および「Entrenched in the Digital World」『Business Today』2013年2月3日付(http://www.businesstoday.in/magazine/lbs-case-study/burberry-social-media-initiative/story/191422.html, 2018年1月14日アクセス)。

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