多国籍企業研究第11号
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35ラグジュアリー消費における知覚価値と倹約志向の相互作用      ― ラグジュアリー・ブランド品を所有する日本人を対象に ― 李  炅泰次に、相関係数の二乗値(squared correlation estimate: SCE)とAVEを比較する方法で弁別妥当性を検討した。これは弁別妥当性の厳格な判定法で、各AVEの値がそれぞれの変数間SCEより大きい場合に弁別性が支持されることになる(Fornell & Larcker, 1981; Hair et al., 2010)。図表2のように、AVEの値はそれぞれ変数間SCEより大きく、弁別妥当性が認められた。さらに、合成信頼性(composite reliability)を求めたところ、いずれの変数も良好な内的整合性を示した(Bagozzi, 1981; Fornell & Larcker, 1981)(図表2)。図表2 相関係数、AVE、CR12345AVECRα1.実用的価値-0.720.490.690.580.580.840.842.感情的価値0.52-0.560.780.620.730.930.933.象徴的価値0.240.32-0.570.570.610.940.944.満足0.480.610.33-0.750.750.900.895.意図0.330.370.330.57-0.720.890.88〈注〉対角線を基準に、上の数値は相関係数、下の数値は相関係数を二乗した値。   AVE: Average Variance Extracted、 CR: Composite Reliability、 α: Cronbach’s alpha倹約による群分け:群分けの基準となる倹約の全項目(n=8)を最尤法・プロマックス回転による因子分析にかけた。その結果、図表3のように2因子構造がみられた。第1因子はお金の節約に関わる4項目、第2因子は持ち物の有効活用に関わる4項目で構成されていた。前者がお金に向けられた倹約、後者がモノに向けられた倹約と考えられるため、第1因子を「カネ」、第2因子を「モノ」と命名した。KMO値は0.84、両因子の累積寄与率は49.01%、Cronbachのαは「カネ」0.82・「モノ」図表3 倹約の因子分析結果と記述統計量項目カネモノどのようにお金を使うかについて、私は注意深くあることを信条としている.95自分のお金を最大限に活用できるように、私は自分自身を律している.90お金を節約できるのなら、ほしいモノの購入を待つこともやぶさかでない.56将来のためにお金を貯めるべく、いま購入を我慢しているモノがある.39持ち物を大切に扱えば、長期的に必ずお金が貯まる.67まだかなり使えるのに捨てられてしまうものがたくさんある.61自分の資産を上手く活用していると、気分が良い.59既に持っているモノを再利用することができれば、新しいモノを買う意味はない.39Cronbach’s α.82.71平均値4.074.35中央値4.004.25標準偏差.88.74因子抽出法: 最尤法回転法: Kaiser の正規化を伴うプロマックス法

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