多国籍企業研究第11号
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29ラグジュアリー消費における知覚価値と倹約志向の相互作用 ― ラグジュアリー・ブランド品を所有する日本人を対象に ― 李 炅泰al., 2008; Shukla & Purani, 2012; Wiedmann et al., 2007; Wong & Ahuvia, 1998)、LBの原産地効果(e.g., Aiello et al., 2009; Arora et al., 2015; Godey et al., 2012; Shukla, 2011)などが含まれる。本研究は前者の知覚反応に関する流れを汲んでいるといえる。ただし、国境を越えてラグジュアリー民主化が進んだ今日、相反するだけではない贅沢消費と節約意識の関係性に注目することの意味は大きい。この点で、本研究は他の研究と一線を画している。さらに、成熟した日本市場の購買経験者から得られた実証的知見は、成長著しい新興国のラグジュアリー市場を予測する際にも参考になり得る。2.先行研究と仮説2.1 ラグジュアリー・ブランド(LB)概念:「luxury」は豪華さ(品)や贅沢さ(品)のことであるが(『大辞泉』)、必ずしも概念規定が明確なわけではなく、意味や価値に関する認識も文化、文脈、主観などによって一様ではない(Christodoulides et al., 2009; Le Monkhouse et al., 2012; Shukla & Purani, 2012; Tynan et al., 2010; Wiedmann et al., 2007; Wong & Ahuvia, 1998)。Vigneron & Johnson(1999)では、プレステージ・ブランドを上級市場ブランド、プレミアム・ブランド、ラグジュアリー・ブランドの3つに分類し、順にプレステージの度合いが高くなると説明する。しかし、同じブランドであっても3つのカテゴリーのどれに属するかは、やはり個々人の知覚に依存するという。結局、どこからがラグジュアリーなのかは、個人の知覚的判断の問題である(Tynan et al., 2010)。知覚価値次元:このようにLBの概念は主観的な性質を持っており、その知覚価値も多元的に説明されてきた。先述のVigneron & Johnson(1999)では11の研究を踏まえて、顕示性、独自性、自己拡張、品質、ヘドニズム、その他に分類する。前の3つはLBの対人的効果に関連する価値次元である。顕示性は高価ブランドの見せびらかしに関わるヴェブレン効果を、独自性は他者との差別化を図るスノッブ効果を、自己拡張はプレステージ集団への追従によって自己概念の向上をもくろむバンドワゴン効果を、それぞれ反映している。次の2つは個人的な動機に関わる価値次元であり、品質はLBに素晴らしいクオリティーを期待する完全主義を、ヘドニズムは感情的な快楽をそれぞれ反映している。その後、Vigneron & Johnson(2004)では、上記5つの知覚価値を測定する尺度(Brand Luxury Index: BLI)を開発し、オーストラリアの学生標本で信頼性(n=1,060)と妥当性(n=1,322)を検証した。このBLI尺度に対して、Christodoulides et al.(2009)では台湾人の一般消費者を対象に再検証を試みた。しかし、信頼性と妥当性は支持されず、BLIの5次元も再現されなかった。著者らはその結果に対して、学生と一般消費者との違い、そして欧米と東アジアの異なる文化から原因を推察している。このような分析結果の相違は、LBへの価値知覚が文化や文脈によって一様ではないことを示しており、調査ごとに価値次元を確かめる必要性を示唆している。現に、LBの知覚価値次元は図表1の通り論者によって多様であり、支配的な分類が存在するわけではない。ただし、おおむね共通して取り上げられる3種類の価値次元がある。1つ目は品質や機能を軸とする認知的次元、2つ目は内面的な快楽を軸とする情緒的次元、3つ目は顕示性と自己
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