多国籍企業研究第11号
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19日系中小製造業のアジアにおける新規販路開拓プロセスの研究 守屋 仁視大きな方針整合を密接に行っている。このような密接なコミュニケーションや方針整合は、全社経営方針に基づき、海外部門のトップであったF氏が中心になり仕組みつくりを行ってきており、こうして作られた連携力が大きな力となっている。また日本の営業や、日本勤務の技術者はいつ要請があっても現地にいけるように常に準備している。またF氏をはじめ、日本の責任者は頻繁に現地会社を訪問し、現地の把握に努めている。この日本と現地との連携力を元に販路開拓や現地でのものづくりのための技術開発が行われる。(3)新規取引先情報の入手とK社の強みを生かした受注日系新規取引先については、最初の情報は日本側で見つけることが多い。主に自動車部品事業本部の国内の営業からの情報や、国内における新規開拓営業の結果、ティア1企業が現地で調達できる良いサプライヤーを探しているという情報が入ってくる。また、K社は自社の内製品以外に沢山の買い入れ品を扱っているが、それらサプライヤーからの情報も役に立つことが多い。その情報をもとに、まず日本側で営業を行う。それが第一歩の活動となって現地の日本人責任者との連携で、進出先で新規取引先への営業が始まる。従って、前述した日本の自動車部品事業本部と現地営業の連携が重要となる。販路開拓には、メーカーベンダーである強みが活かされる。日本と同じくティア1企業は、毎日三回(朝、昼、夜)の看板方式やJITでの納入を期待する。日本と同様のJIT生産体制を確立しておかなければならない。ティア2企業の中には、小物部品などを生産する会社も多く、そのような製品は納入されるティア1側も小口過ぎて管理が大変である。そこで、K社が他のティア2企業の製品をティア1企業に代わって調達し、同時に納入することで、顧客であるティア1企業は面倒な小物部品を調達する手間が省ける。必要な分だけ、JITでK社から納入が受けられるのである。K社が窓口となって、場合によってはK社内製品とアセンブリーして提供する(アセンブリーパーツと呼んでいる)。顧客が使いやすいように、組み合わせて納品したり、アセンブリーした部品の固まりとして納入したりということである。K社が中国やタイに設立した会社は、買い入れ製品を現地で調達するだけでなく、日本や第三国から調達することも行っている。これは「納品形式における差別化力」とでも呼ぶべき、K社の強みである27。K社のメーカーベンダーとしてのもう一つの強みは買い入れ品の品質評価力である。K社はメーカーでもあるから他社より購入し販売する商品も、自社生産品の品質管理のしくみと同等の評価を行うことで、買い入れ商品の品質保証を行う。このしくみは一般商社との比較においてはより優れている点である。K社が取引のなかったティア1企業が調達していた部品を、K社が品質評価して調達し、自社で内製するパイプや金属切削品とセットでタイムリーに納入することで、新規取引に至った例があった。まさにメーカーベンダーとしてのK社の強みを生かした新規開拓といってよいだろう。27 筆者の造語である。K社で使われている言葉ではない。
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