多国籍企業研究第11号
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14日系中小製造業のアジアにおける新規販路開拓プロセスの研究 守屋 仁視アセアンが市場としての魅力が注目され、現地のローカルメーカーも競合として力をつけてくる。その結果、2010年前後から進出先での販売拡大についての具体的な事例研究が散見されるようになってきた。例えば、湯(2009)、舛山(2012)、丹下(2015)などである。しかし、随伴進出など本邦独特の進出経緯を踏まえ、日本の中小製造業を研究するための国際経営の理論的文献はほとんど見当たらないのが現状である。そのような中、30年以上も前の中堅企業の研究ではあるが、吉原(1984)は経営資源を鍵概念として事例研究を行った6。吉原(1984)は、海外進出にあたってどのような経営資源が必要かという多国籍企業論の議論を、大企業以外の中堅企業に向けたという意味で貴重な研究であった。吉原(1984)は筆者の分析モデルで後述する。海外においても中小企業の国際化研究は、大企業の研究と比べると歴史が新しい。(Mejri and Umemoto, 2010)。過去にはウプサラモデルのような発展段階論が中心であったが、特にボーングローバル企業の出現以降はその妥当性が批判されるようになった。(Sternad, et al., 2013)。また、Coeviello and McAuley (1999)等から、発展段階論、ネットワークアプローチ、直接投資理論など大企業を前提に発展した理論を単独で適用するだけでは、中小企業の海外展開をうまく説明できないという主張がなされた。Bell et al, (2003)、Etemad (2004)などが既存の理論を統合するモデルの構築を開始し、様々なモデル構築が試みられている。経営資源に着目した要素を組み込んだモデルとしては、Sternad, et al. (2013)やWeerawardena, et al. (2007)などがある。Sternad, et al. (2013)は国際的な成果を出す力(International performance capacity)に影響する要素をモデル化した。また、Weerawardena, et al. (2007)は、ボーングローバル企業の国際化モデルを提示した。これらに共通する要素は、競争優位性の視点、経営者や経営幹部の視点、市場や競合など外部環境に関する知識の視点、外部とのリレーションやネットワークの視点である7。まだ様々なモデルが試行されている段階だが、これらの統合モデルが含む視点は参考になる。マーケティング・ケイパビリティに関する研究では、Ripolles and Blesa (2012)やZhou, et al. (2012)は、マーケティング・ケイパビリティが海外市場への高いリソースコミットメントや積極的な参入形式と関係し、国際化の成果と関係があることを示した。しかし、それはマーケティング・ケイパビリティと国際的な成果の相関を示しただけであり、どのようなマーケティング・ケイパビリティが必要なのか、それをどのように獲得するのかを示していない。Evers, et al. (2012)は、6社に対して定性的な事例分析を行い、INV企業のステークホルダーが、マーケティング・ケイパビリティの形成プロセスにどう影響するのか、どんなマーケティング能力形成に関与するかを探求しモデル化した。しかしながら、以上のような海外研究はINVやBGCと呼ばれる設立早期で国際化する企業が中心となっていて、特に輸出やエントリー段階に力点が置かれている。工場進出後時間が経過し、現地での新たな販路開拓が求められている本邦中小製造業の実情に必ずしも沿ったものではない。またINVやBGC研究では、業種もハイテク企業などが中心となるが、本邦中小製造業6 吉原(1984)p. 57 守屋(2017)p. 117

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